・ ページ23
「Aにとってええことなんてひとつもない。なのになんでやるんや、こんな不利益なこと」
処置が終わったのか、擬似皮膚組織が自動的に形成される。
ロボロの頬を撫でその感触を確かめたAは「うん、問題ないね」と微笑んだ。
「質問の答えだけど、それはロボロくんがそう思っただけでしょ？」
「思ったいうか、合理的な意見を述べただけで…」
ロボロのセリフを遮るように、Aはグッと顔を近づける。
「…私はね、トントンみたいなアンドロイドを腐るほど見てきた」
壊れたと放置されたアンドロイド。
使えないと壊されたアンドロイド。
用済みだと捨てられたアンドロイド。
敵を殺せと…火の海に飛び込んでいくアンドロイド。
人間を模した彼らが処分される様は本当に恐ろしい。
目を瞑りたくなるほどに。
「ある一件で、私はアンドロイドに借りがある。内容を話す気はない。でも私は、そのアンドロイドに救われた。だからその恩を返してる。それだけ」
「やったら、そのアンドロイドに直接返せばええ話やろ」
その言葉にAはピシャリと固まる。
隣で聞いていたエーミールは言葉も無く視線を落とした。
「返せないの…皆まで言わせないで」
「………」
Aは少しだけ悲しい表情を浮かべる。
ロボロはそんな姿を見て言葉を詰まらせた。
「私は…アンドロイドにも命があると思ってる」
その言葉に目の前にいるロボロも、そばにいるゾムも目を丸くする。
「いの…ち…？俺らが…？ロボットやのに？」
明らかに動揺の色を見せたロボロ。
「ロボットだから？じゃあ命の定義ってなに？人間の命だって目に見えないでしょ？ロボロくんは私の命、見えるの？」
「そら…見えへんけど…呼吸して、あったかくて…恐ろしいほど冷酷で…でも…誰かを思いやれる…そういうんが…命で…人間なんやないのか…？」
「だったら、今目の前にいる彼は？」
そう言ってAはゾムの方を向く。
ロボロも釣られるようにゆっくりと同じ方を向いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 693人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しゃぴ - がんばって (8月31日 17時) (
レス) @page3 id: 70ecd8a4b0 (このIDを非表示/違反報告)
味鈴(プロフ) - まる麺さん» まる麺さん 喫茶の店主ポジですね…！私もお気に入りですありがとうございます！ (7月26日 19時) (レス) id: 0263eefc6e (このIDを非表示/違反報告)
まる麺 - emさんのお話の中での立ち位置が似合いすぎて好きです！！ (7月26日 0時) (レス) @page32 id: 81fa0833c9 (このIDを非表示/違反報告)
味鈴(プロフ) - ノットラインさん» ノットラインさん ありがとうございます！マイペースに頑張りたいと思います…！ (7月23日 22時) (レス) id: 0263eefc6e (このIDを非表示/違反報告)
ノットライン(プロフ) - めちゃくちゃ面白くて更新楽しみにしています！！主様のペースで更新頑張ってください！！ (7月23日 2時) (レス) @page25 id: ef443ece5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：味鈴
| 作成日時：2023年7月15日 18時
