・ ページ3
高い建物ばかりが連なっているこの街の路地は、昼でも薄暗い。
夜になれば路地の奥はさらなる暗闇に包まれる。
常人には見えないし、こんなところにわざわざ踏み込んでトラブルを招こうとは思わないだろう。
「………」
比較的明るい路地の手前で一度止まり呼吸を整える。
トラブルに慣れてるとはいえこの瞬間はいつも緊張する。
ザッと一歩踏み出し奥へ進んでいくと段ボールの山の中にひとりの男が座り込んでいた。
フードを深く被った男はこちらをチラリと見る。
どうやら意識はあるようだ。
「怪我してるの？喧嘩？」
この隣の店の子がびっくりしてたわ。
そう伝えながら近付くと男はバッと立ち上がり手に持っていたナイフを握る。
「……私は貴方に危害を加えるつもりはない」
両手を上げ、無防備ですとアピールする。
しかし男は警戒を解かず敵意をむき出しにしてこちらを睨んでいた。
暗い闇の中であるにも関わらず、男の瞳は光っているようにすら見える。
「私は怪我をしてるなら助けたいだけで……」
そこまで話した時、Aは違和感に気が付く。
ナイフに気を取られていたが男の足元を見る。
必死に何かから逃げたせいか、必死に何かを追ったせいかは分からないが靴が脱げている。
片方しか履いていない。
そしてその裸足の方のからは針金のような、細い金属が剥き出しになっているのが見えた。
「貴方…アンドロイド…」
それに気付いた瞬間、男は素早く駆け出しAの頬にナイフを押し当てた。
咄嗟に身構えるが、頬がピッと切れてしまう。
隙を付きパーカーを着た男はAの背後に周り、口を手で覆った。
看板娘は血塗れの男と言っていたが、よく見ると服についている赤黒い血はしっかり鉄の匂いがする。
ほとんどが返り血だ。
このアンドロイド自体には足首以外全く傷がついていない。
人に似せて作られているアンドロイドは赤色に着色された燃料が身体を流れているが、鉄の匂いはしないから近付けば分かる。
「足を怪我して早く走れへん。隠れるところが必要や。お前、用意できるか？手を外すから、『はい』か『いいえ』で答えろ」
男がゆっくりと口元に当てられた手を外す。
Aは緊張した面持ちで「はい」と言われた通り短く答える。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 693人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しゃぴ - がんばって (8月31日 17時) (
レス) @page3 id: 70ecd8a4b0 (このIDを非表示/違反報告)
味鈴(プロフ) - まる麺さん» まる麺さん 喫茶の店主ポジですね…！私もお気に入りですありがとうございます！ (7月26日 19時) (レス) id: 0263eefc6e (このIDを非表示/違反報告)
まる麺 - emさんのお話の中での立ち位置が似合いすぎて好きです！！ (7月26日 0時) (レス) @page32 id: 81fa0833c9 (このIDを非表示/違反報告)
味鈴(プロフ) - ノットラインさん» ノットラインさん ありがとうございます！マイペースに頑張りたいと思います…！ (7月23日 22時) (レス) id: 0263eefc6e (このIDを非表示/違反報告)
ノットライン(プロフ) - めちゃくちゃ面白くて更新楽しみにしています！！主様のペースで更新頑張ってください！！ (7月23日 2時) (レス) @page25 id: ef443ece5c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：味鈴
| 作成日時：2023年7月15日 18時
