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「ママ!すごくきれい!」
商店街を歩くと、ひとりの少女がキラキラした眼差しでAを見ている。シャオロンはその少女に近付くと、目線を合わせるように屈みチラシを手渡す。
「お嬢ちゃんも是非、我々神社の夜桜祭りに来たってや?屋台も舞も、楽しいことがたぁくさんあるで」
猫面越しにウインクをすると、少女はパァッと顔を輝かせ大きく頷いた。
傍の母親に絶対行きたいとねだる姿を見送り、シャオロンは練り歩きに戻っていく。
一定のリズムで鳴る鈴、美しい猫面を被った女性と、それを囲う男たち。
その光景は商店街の人々の目を釘付けにし宣伝効果は抜群だった。
出だしは上場だとAは安心して練り歩きを終え、社へ帰って行った。
「仕事した後の煙草はうまいわ〜」
神社に戻ってきた面々は本殿に戻る。
トントンとショッピ、ロボロ、シャオロンは今回の練り歩きに使った道具の整備と片付けをし、ゾムとAは逢魔時になる前にと晩御飯の支度を始めるため勝手場へ向かった。
大先生、コネシマ、チーノは縁側に座ると早々に煙草に火を付けた。
たった数時間吸わなかっただけだというのに煙草がこれほど美味いとはと、人間の作り出した嗜好品に感謝の意を示さざるおえない。
「猫面被ったのなんて何百年振りっすか?」
「最後に被ったんは……あぁ、アイツが城下町行きたい言うから着いてった日以来やな」
「あれ被ると当然人が見るからなぁ…まぁ素顔見られると記憶やらなんやら面倒やし仕方ないんやけど…」
アイツ、というのはAの前世の事である。
緊急事態でない限り、人間の目に直接触れる時は必ず被っている面。
久々に蔵から召喚すると、案の定埃をかぶっており、だいぶ汚れていた。
それを丁寧に掃除し、禿げた塗装を塗り直し、皆に配っていたAを思い出し、チーノは口角を上げる。
「Aさんはほんまに一生懸命で素敵や思いません?」
「はいはい知っとるっちゅうねん」
「最近チーノのA大好きアピウザいな」
「ええ?だって大好きですもん」
腹立つわーと眉を寄せる大先生とコネシマに構うことなくチーノはニコニコと笑いながら、煙をふぅと吐いた。
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味鈴(プロフ) - 色樹さん» 色樹さん ありがとうございます!マイページに頑張らさせていただきます。 (8月12日 14時) (レス) @page19 id: 0263eefc6e (このIDを非表示/違反報告)
色樹 - すごく面白かったです!体調を崩さないよう頑張ってください!!!!!! (8月5日 20時) (レス) @page7 id: 09f29be611 (このIDを非表示/違反報告)
味鈴(プロフ) - にこげさん» にこげさん 誤字報告ありがとうございます!訂正致しました! (7月6日 20時) (レス) id: 0263eefc6e (このIDを非表示/違反報告)
にこげ(プロフ) - 更新お疲れ様です!最新話のよもつへぐいが一部よもつべぐいになってますよ〜! (7月6日 19時) (レス) id: 4a884aada1 (このIDを非表示/違反報告)
いちごおしちゃん☆(プロフ) - 短編も面白いです!次の更新が楽しみです!体調に気をつけてこれからも頑張って下さい! (7月5日 20時) (レス) @page22 id: 44c7a03b53 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:味鈴 | 作成日時:2023年6月29日 21時