・ ページ33
「Aさんも、いつか必ず知る日がきますよ」
そのまま走り去っていったエーミールの背中を見送る。
既にゾムとロボロ、勉強を教わりにきた少年は事務所に入っており、Aはそれを微笑ましいと言わんばかりに見つめる。
「見たかった光景の始まりって感じがして…いいなぁ」
心を持ったアンドロイドが住む地区には、それに理解がある人間も暮らしている。
もちろん、世間からは好奇の目で見られるし、このアンドロイド地区なんて不要だと言う団体が押し寄せてくることもある。
Aはそこで再び自警団を名乗り、気の知れた『友人達』と共に生活をする。
全てはアンドロイドを開発した企業の社長が政府に掛け合ってくれたおかげだ。
『私は『人の助けになるように』という思いを込めて作り、コアにもそれを組み込んだ。自我を得たアンドロイドの多くはきっと、近くにいる貴方の幸せと共存を望んでいるはずですから』
この国中に流れた、フューラーという名の社長の放送。
アンドロイドを作った生みの親が、自我を得た彼らを守った。
たくさんの反対もあったそうだが今こうしてお天道様の下で、堂々と胸を張って生きていられる。
「願うなら一度、お会いしてみたいなぁ」
そんなAの小さな呟きが彼に届くことはない。
だがエーミールの言った通り、数年後、数十年後、会う事になるであろう。
この地区が皆に認められるようになった時、必ず。
「A！」
いつもの優しい声色で、Aを呼ぶ声。
「なぁに？」
Aを包み込むように抱きしめたその腕は、人間だとかアンドロイドだとかは関係ない。
「こうしたかっただけや！」
ただの愛おしくて、大切で、守りたい仲間のひとりだ。
世界中が彼らをエラーのあるアンドロイドだと言ったとしても、Aを抱きしめるこの優しいぬくもりはここに『生きている』確かな証拠だ。
END
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1318人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「wrwrd」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まめ - すごく面白かったです！次回作に期待まってます(*^^*) (4月30日 21時) (
レス) @page35 id: faa4b97585 (このIDを非表示/違反報告)
まめ - すごく面白かったです！次回作に期待まってます(*^^*) (4月30日 21時) (レス) @page35 id: faa4b97585 (このIDを非表示/違反報告)
味鈴(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます。全て読ませて頂いております。お一人ずつお返事できずに申し訳ありません。次回作も更新致しましたら、どうぞよろしくお願いいたします。作品を見てくださり感謝を申し上げます。 (2月25日 23時) (レス) id: 0263eefc6e (このIDを非表示/違反報告)
がきんちょ(プロフ) - 完結おめでとうございます！前作も今作も読ませていただきました！味鈴さんの作品の世界観や設定等とても好きです(*´∇｀*)次回作、楽しみに待ってます！！ (2月19日 15時) (レス) @page35 id: e821c806fa (このIDを非表示/違反報告)
らて - 初コメ失礼します。完結おめでとうございます！このような素晴らしい作品に出会えたこと、完結まで見届けられたことすごく嬉しく思います！設定から世界観、文章表現もとても素敵な作品だと思いました。何度も感情移入してしまいました…！次回作も楽しみにしています！ (2月12日 19時) (レス) id: ec622eb312 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：味鈴
| 作成日時：2023年8月26日 20時
