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「──もしかしてさ、伊野尾ちゃん、気になるの？」
「は？」
予想外の一言。
ぱちりとまばたきするおれの前で、じーっと山田が見上げてくる。
見覚えある、きらきら上目遣いだ。
いつもよりちょっとだけ、綺麗な石ころを見つけた子どもみたいな輝きを秘めたその目線にたじろぐ。
「おれのタイプ、そんな気になった？元カノのこと気にしてる？さっきからちょっと機嫌悪いよね？」
矢継ぎ早の質問と前のめりな姿勢に、おれはポケットに手を突っ込んだまま後ろにのけぞった。
「気になったってわけじゃないよ。てか機嫌悪くないし」
「でも伊野尾ちゃんからこんなにおれの話蒸し返すことなんかないじゃん」
「蒸し返してません」
「あ、ほら。もうその言い方が機嫌わりーよ」
なにそれ。
なんかニヤニヤしてるし。
てかおれの機嫌が悪くて、なんでそんな嬉しそうなんだよ。
したり顔がムカついて、山田の首に巻かれたオシャレそうなマフラーをぎゅっと締めてやる。
「ぅぐっ……おい！普通に暴力！」
「寒そうだから巻き直してやっただけだもーん。ほら、帰るぞ」
そう言って山田を追い抜かすように歩き出したけど、数歩歩いて、なんとなく足を止めた。
「伊野尾ちゃん？」
振り返ると、めちゃくちゃになったマフラーを整えながら山田がじっとおれを見つめてて。
冬の夜空みたいに澄んだ瞳のまんなかにおれだけが映ってる。
吐き出した白い息と同じように、心がゆらゆら揺れた。
「え、ちょ、なに」
無言で引き返して山田に近づけば、ぎょっとした顔して、でも立ち止まったまま。
鼻先がくっつくほど顔を寄せても、長いまつげをまたたかせるだけで嫌がるそぶりもない。
「……あの、緊張するんですけど」
山田の視線は相変わらず上目遣いで、
ふと、いままでの彼女はたぶんこんな目線の山田は見たことないだろうなって思った。
ちっちゃくて可愛い彼女じゃ見られない山田の瞳の角度。
いまこの瞬間は、おれだけの小さな夜空。
ふいに胸の奥に強い感情がこみ上げてきた気がして、でも、その名が分からない。
「いのおちゃん、まじでどしたの」
「…んーん、なんでもない」
不思議そうな山田の肩を押しやり、今度こそ歩き出す。
近づいて離れて、気ままに振る舞ってる自覚はあるよ。
案の定「なんだよ、もう…」ってため息まじりのぼやきが背中越しに聞こえてくる。
それでも早歩きの足音が追いかけてくるのを感じて、なんだか、うん。
そんな感じ。
続く (更新停止中)
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ひとみ(プロフ) - 泣くないのちゃんもこれも大好きすぎて3ヶ月に1回くらい読みにきてます笑 この続きもめちゃくちゃ気になるので続きをお願いします！！ (2021年11月27日 17時) (
レス) @page36 id: e39657dd30 (このIDを非表示/違反報告)
荒川 - めちゃくちゃ好きです！！！続きをお願いします泣 (2021年10月26日 5時) (レス) id: f6705dec1d (このIDを非表示/違反報告)
inuneko(プロフ) - どうしよう！キュンキュンしすぎて叫び足りないんですけど！好きです！あと10回見てきます！！*\(^o^)/* (2020年2月6日 23時) (レス) id: 8271c7e9a0 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんは。いのちゃんが山ちゃんを好きになってる感じでニヤニヤしちゃいます。早くいのちゃんが恋に気付くといいなーと思ってます。 (2020年2月6日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
あまなつ(プロフ) - さくさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけてなによりです！これからも更新がんばりますね！ (2020年2月6日 22時) (レス) id: 8c441c3d0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あまなつ
| 作成日時：2020年1月5日 12時
