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*
「い、伊野尾ちゃん……っ」
タクシーで帰るという知念を見送って、
電車の時間を検索しながら歩き出した瞬間、山田に呼び止められた。
身体は前を向いたまま、顔だけで振り返ったことに他意はない。
だけど山田は眉を下げて「あのさ…」って控えめにおれのコートの裾を掴んだ。
少女漫画のヒロインみたいな行動に毒気が抜けて、思わず笑っちゃう。
「なんだよ」
吹き出したおれに、山田はなんで笑われたのか分かってなさそうな顔で、それでもホッとしたように表情を緩めて隣に並んできた。
「電車で帰るんでしょ。おれも途中まで同じだから、……一緒帰ろ」
そう言いながら、おれのコートを掴んだまま駅の入り口をスルーして進むから「え、酔ってんの？」って慌てた。
「あんくらいじゃさすがに酔わねーわ。一駅分歩いたら、いのおちゃん乗り換えなしで帰れるじゃんか」
「おれ、別に乗り換えなしにこだわりないけど」
「……うるっさいな。もうちょっと一緒にいたいだけ。こう言えばいい？」
最近気づいた。
山田はすぐに耳が赤くなる。
頬やおでこより先に赤くなるのは耳だ。
本人は無自覚みたいで一生懸命ほっぺた隠してるけど、そこじゃないんだよなあ。
いいよ、って耳をつつきながら返すと、また山田は不思議そうな顔。でも、嬉しそう。
「…さっきの、分かってると思うけど、本音じゃないから」
ぽつりと山田が呟いたのは、人通りの少ない公園通りに足を踏み入れた頃だった。
「ああ、おれのこと死ぬほどディスってたやつ」
「ディスっては……ごめん」
しゅん、と見えない犬耳が垂れる。
「いーよ。おまえが嘘つくの絶望的に下手なのは分かったし……あ、違うか」
「え？」
「ちっちゃくて髪の毛ふわふわで…なんだっけ、ピンクが似合う子？がタイプなのは本当なんだっけ」
元カノみんなそういう子だって、知念言ってたもんね。
ますますなんでおれ？って気持ちが増す。
それこそ女の子ってのを抜きにすれば、ほとんど知念が理想なんじゃないの。
「タイプと本当に好きになる人が同じだとは限んないから」
「元カノは？」
「…まあ、好きになりやすいっていうのはあるけど」
「へー。じゃあおれは完全イレギュラーなわけだ」
「いや前の彼女もタイプだから好きになったわけじゃ……」
ごにょごにょ煮え切らねえな。
なんだか呆れちゃって、わざと歩幅を大きくして山田を追い抜こうとしたおれを「もしかしてさ」と妙に弾んだ声が遮った。
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ひとみ(プロフ) - 泣くないのちゃんもこれも大好きすぎて3ヶ月に1回くらい読みにきてます笑 この続きもめちゃくちゃ気になるので続きをお願いします！！ (2021年11月27日 17時) (
レス) @page36 id: e39657dd30 (このIDを非表示/違反報告)
荒川 - めちゃくちゃ好きです！！！続きをお願いします泣 (2021年10月26日 5時) (レス) id: f6705dec1d (このIDを非表示/違反報告)
inuneko(プロフ) - どうしよう！キュンキュンしすぎて叫び足りないんですけど！好きです！あと10回見てきます！！*\(^o^)/* (2020年2月6日 23時) (レス) id: 8271c7e9a0 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんは。いのちゃんが山ちゃんを好きになってる感じでニヤニヤしちゃいます。早くいのちゃんが恋に気付くといいなーと思ってます。 (2020年2月6日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
あまなつ(プロフ) - さくさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけてなによりです！これからも更新がんばりますね！ (2020年2月6日 22時) (レス) id: 8c441c3d0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あまなつ
| 作成日時：2020年1月5日 12時
