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二人並んで歩く住宅街は、相変わらず凍えるほどに寒いけど、
山田が隣にいる分、風が少し遮られて物理的にちょっとだけ温かい。
SNSなんかでは不仲説とか流れちゃうようなおれと山田がこうして二人で歩いてるって、なんかやっぱり現実味がない。
それ言い出したら、そもそも山田と付き合ってるこの状況が一番非現実的なんだけども。
ひそめた声で当たり障りのない世間話をして、時折ぶ厚いコート越しに肩と肩がぶつかる。
そのたびに山田が大げさにまばたきをするのが、なんだか可笑しかった。
素直に可愛いと思うんだ、こういうの。
恋をすると綺麗になるってのもあながち間違いじゃないよ。
「大ちゃんと飲みながらどんな話すんの」
「んー……くだらない話」
「たとえば?」
「うーん……」
たとえばって言われても。
普段楽屋でしてるような話だけど、って思いながらふと思いついたことを口にしてみる。
「山田と付き合うことになった、とか」
「……へっ?」
おーおー、見事な驚き顔。
目も口も大きく広げた山田の顔はギャグ漫画もかくやなのに、
元が美形なおかげか、それなりに見れるんだからやっぱり顔のよしあしって大事だよな。
「い、言ったの?大ちゃんに?」
「言ったよ。まずかった?」
「まずいっていうか……え、逆にいいの?」
窺うような山田の目に、隠そうとしても隠しきれずにうっすら滲む、期待とか喜びみたいな眩しい感情。
からかってやるつもりだったのに、そのまっすぐさに罪悪感が胸をちくりと刺す。
マフラーで丸く盛り上がった後ろ髪をくしゃりとかいて、山田に視線を返した。
「……あー、山田には、言っとこうかな」
「え、なにを?」
「おれの欠陥」
「血管?血管細くて注射針が刺さんないとか、そういう話?え、なんの話してんの?」
「お前こそなんの話してんだよ」
コントみたいなすれ違いをして首をかしげる山田に気持ちが和んで、ちょっと笑う。
山田もちょっとばかなんだよなあ。
一歩分だけ山田の前を歩いて、「おれねぇ」とできるだけ軽く聞こえるように話した。
「誰のことも好きになったことなくて。今までの彼女とかも全部向こうから告白されて、まあいっかってオッケーして適当に付き合ってたんだよね」
「……付き合ってるうちに好きになったとかは?」
「ないよ」
「一回も?」
「いっかいも」
だから、山田もおんなじなんだよ。
暗にそんな本音を込めて笑ってみせると、山田の長いまつげが揺れた。
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ひとみ(プロフ) - 泣くないのちゃんもこれも大好きすぎて3ヶ月に1回くらい読みにきてます笑 この続きもめちゃくちゃ気になるので続きをお願いします!! (2021年11月27日 17時) (レス) @page36 id: e39657dd30 (このIDを非表示/違反報告)
荒川 - めちゃくちゃ好きです!!!続きをお願いします泣 (2021年10月26日 5時) (レス) id: f6705dec1d (このIDを非表示/違反報告)
inuneko(プロフ) - どうしよう!キュンキュンしすぎて叫び足りないんですけど!好きです!あと10回見てきます!!*\(^o^)/* (2020年2月6日 23時) (レス) id: 8271c7e9a0 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんは。いのちゃんが山ちゃんを好きになってる感じでニヤニヤしちゃいます。早くいのちゃんが恋に気付くといいなーと思ってます。 (2020年2月6日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
あまなつ(プロフ) - さくさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけてなによりです!これからも更新がんばりますね! (2020年2月6日 22時) (レス) id: 8c441c3d0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまなつ | 作成日時:2020年1月5日 12時