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このあと暇ならうちに来ない?
って、駆け引きも何もないストレートなデートのお誘いを受けたのは、
まとめ撮りのスタジオ収録の二本目が終わった休憩時間だった。
「ふーん、じゃあ行こっかな」
「えっ!?」
「いやなんで驚いてんの」
せっかくこっそり声まで潜めてたのに、そんな反応したらバレバレじゃん。
ほら、みんな一気にこっちに注目してる。
なになにどうしたのってわらわら集まってきそうなメンバーたちに、
山田は慌てて「なんでもない!」とまた大げさに両手なんか振っちゃって。
「……え、あの、マジで来てくれんの?」
みんなの注目を何とか追い払い、今度こそ小声で山田が窺ってくる。
「だからさ、誘っといてなんでそんな驚くんだよ。社交辞令だってんなら別に行かないけど」
「や、ちげーって!ほんとに来てほしいなって思って誘ったよ?誘ったけど……」
「けど、なんだよ?」
「……ぐいぐい行きすぎてウザがられるかと思った」
ふい、と視線を逸らし、さらに小さな声。
僅かに尖った唇がただの強がりってことくらいは、残念ながらお見通しだ。
「恋人なんだから、ぐいぐい行くもなにもないでしょ。お誘いありがと。遠慮なくお邪魔させてもらうよ」
丸い後頭部にぽんと手を置いてそう言えば、逸らされた視線がまた戻ってくる。
今のけっこういいこと言ったんじゃない?って思ったんだけど、
山田は少し複雑そうな表情で苦笑いした。
その表情にあれ?と首をかしげる間もなく、テーブルの下でぎゅっと手を握られる。
「……山田」
「見えないからいいでしょ。それより、おれ今日車で来てるから。運転席と助手席どっちがいい?」
「助手席。寝ててもいい?」
「宣言早いな。いいよ、好きにして」
堂々の居眠り宣言に山田は小さく吹き出して、その勢いで手を離した。
お手入れバッチリ、すべすべのおててだこと。
暇さえあれば必死の形相でハンドクリーム塗りこんでるもんなあ。
あの飽くなき美への探究心は、いったいどこから湧いてきてんだか。
「……あの、伊野尾ちゃん、そんな見つめられるとさすがに照れるけど」
「あ、ごめん」
いまのは無自覚。
でも、耳を赤くしてそわそわする山田の横顔はまさに美の化身って感じ。
確かにこんだけ素材がよけりゃ、磨かないのが罪って気もするわ。
なんて自分なりの結論出して、わざと余計に見つめてやったら、「マジでそういうとこ!」って真っ赤になって逃げてっちゃった。
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ひとみ(プロフ) - 泣くないのちゃんもこれも大好きすぎて3ヶ月に1回くらい読みにきてます笑 この続きもめちゃくちゃ気になるので続きをお願いします!! (2021年11月27日 17時) (レス) @page36 id: e39657dd30 (このIDを非表示/違反報告)
荒川 - めちゃくちゃ好きです!!!続きをお願いします泣 (2021年10月26日 5時) (レス) id: f6705dec1d (このIDを非表示/違反報告)
inuneko(プロフ) - どうしよう!キュンキュンしすぎて叫び足りないんですけど!好きです!あと10回見てきます!!*\(^o^)/* (2020年2月6日 23時) (レス) id: 8271c7e9a0 (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - こんばんは。いのちゃんが山ちゃんを好きになってる感じでニヤニヤしちゃいます。早くいのちゃんが恋に気付くといいなーと思ってます。 (2020年2月6日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
あまなつ(プロフ) - さくさん» コメントありがとうございます。楽しんでいただけてなによりです!これからも更新がんばりますね! (2020年2月6日 22時) (レス) id: 8c441c3d0c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまなつ | 作成日時:2020年1月5日 12時