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謎のおれと裕翔撮影会が一段落して、正気を取り戻したおれが裕翔から離れたところで、「そういえば」とタナカ先輩が口を開いた。
「伊野尾くん今日大丈夫だったの？」
「ほぁ？」
「予定。今日元々定時退社の予定だったでしょ？」
「ああ……」
昼間の裕翔と全く同じ質問に、みんな他人の予定までよく覚えてるなあ、なんて。
ウイスキーがきつめのジンジャーハイを喉に流し込みながら、テーブルに頬杖をつく。
裕翔がおれに敬語を使わないように、うちのチームは割と上下関係緩めだから、多少のお行儀の悪さにはもはや誰もツッコまない。
「予定、なくなっちゃったんですよね〜…」
「先輩、またドタキャンされてんの」
「ゆーと、またって言うな」
「でも、またじゃん」
「うるせー！」
「いひゃひゃひゃひゃ！ひゃめへ！」
生意気なお口を思いっきりつねり、ふん、と鼻を鳴らす。
完全な八つ当たりだ。
ぐにゃりと体勢を崩し、裕翔にもたれかかるおれにタナカ先輩の同情の視線が突き刺さる。
「んー。伊野尾くんとこって、付き合ってどれくらいだったっけ」
「うーん……いち、にい、……ごねん、かなぁ？」
おれが大学四年の時に告白されてそれからずっと続いてるから……うん、五年であってる。
指折り数えるおれに、「あー」とタナカ先輩は意味ありげな相づち。
「伊野尾くんの歳でそのくらいってなると、いよいよアレかもね」
「アレ？」
「結婚か潮時かの二択。そろそろ見極める頃じゃん？」
「結婚、潮時……」
「ドタキャン続きっていうなら、覚悟しておいたほうがいいかもねえ」
にたりと笑う先輩は先月彼氏にフラれたばっかりで、裕翔が苦笑いのため息をこぼす。
いつのまにか、向こうで盛り上がってた恋バナ軍団もこっちに注目してるみたいで、おれは目を伏せた。
あんまり注目されたい話でもない。
「今どき結婚が全てじゃないですよ」
さりげなくおれを庇う言葉は、たぶん、裕翔は社内で唯一おれの恋人が同性だってことを知ってるから。
「ね、先輩」
「んぐ、」
そう言っておれの口に唐揚げを突っ込んでくる。
そのまま自分のオレンジジュースを飲ませてくるから、「介護か」って思わず笑った。
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komikku(プロフ) - とても面白かったです〜！続きが気になります☆お待ちしてます☆ (2020年6月5日 8時) (
レス) id: 4ae5ae8e00 (このIDを非表示/違反報告)
あまなつ(プロフ) - みるみるみるきーさん» コメントありがとうございます！三者三様、100%の善人は出てこない重めのお話になるかと思いますが、ぜひ今後もお時間のあるときにお付き合いくださると嬉しいです。 (2020年1月5日 23時) (レス) id: 84a58c20c8 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - 新作、おめでとうございます。今後の3人の展開がとても気になります。更新楽しみにしています。 (2020年1月5日 12時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あまなつ
| 作成日時：2020年1月1日 12時
