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店内に充満したアルコールと煙草のにおい。
あちこちから弾けるように響く笑い声の喧騒は、耳に痛くて心地よい。
「それ絶対浮気されてるって!スマホ見ちゃいなよ!」
「え〜!やめてくださいよぉ〜!」
端の席でキャーッと悲鳴を上げる女子社員二人を横目に「恋バナ始まった」と隣の席の裕翔が可笑しそうに笑う。
回ってきた大皿の唐揚げを一つ二つ、いや三つ自分の皿に運んだおれは、ついでに裕翔の皿にも一つ取り分けながらうなずく。
「裕翔はどう思う?アイカワさんの彼氏、浮気してると思う?」
「うーん、二人でごはんくらいは行ってるんじゃないかな。それを浮気と取るかは知らないけど」
「お、裕翔は"二人でごはん"は浮気には入らない派?」
「別にそうは言ってないでしょ」
と言いつつ、別に否定はしない。
ふーん、へえー。
生真面目な潔癖男に見えて、意外とそういうボーダーは甘めだったりして。
「どう思います?」
裕翔をちらりと見て、向かいに座る先輩に話を振れば、先輩は「中島くんならなんでもいいよ。もうなんでも許す!」と高らかに宣言した。
「あーそうだった。タナカ先輩も裕翔親衛隊の一人だった」
「なにそれ、おれ親衛隊あるの?」
「出た、無自覚。男前はこれだからよぉ〜!ほら飲め!」
「いやこれオレンジジュースだけど……」
また子ども扱いする、と頬を膨らませる裕翔に先輩たちが色めき立つのが分かる。
裕翔は不満そうだけど、そんな顔もおれたちからすれば可愛いもんで、「裕翔は可愛いなぁ〜」とビールを放り出して色白の首に抱きついた。
「っ、ちょっと!いのちゃん先輩!」
「ん〜裕翔いいにおいする〜」
「居酒屋なんだから、煙草とお酒のにおいしかしないでしょ!」
「するもん〜。なんだろ、柔軟剤かなあ」
「もう……いのちゃん先輩もう絶対酔ってる…」
しばらく首筋に鼻を寄せていると裕翔は諦めて、おれを首にぶら下げたまま料理を食べ始めた。
心なしか顔と耳が赤い気がする。
もしかして誰かからお酒も勧められたんだろうか。
少し不思議だったけど、周囲から聞こえるパシャパシャという音に気を取られて、すぐにどうでもよくなってしまった。
……ん?パシャパシャ?
「ちょっと〜!なんでみんな無言で写真撮るんですか!?」
おれはとりあえずピースしておいた。
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komikku(プロフ) - とても面白かったです〜!続きが気になります☆お待ちしてます☆ (2020年6月5日 8時) (レス) id: 4ae5ae8e00 (このIDを非表示/違反報告)
あまなつ(プロフ) - みるみるみるきーさん» コメントありがとうございます!三者三様、100%の善人は出てこない重めのお話になるかと思いますが、ぜひ今後もお時間のあるときにお付き合いくださると嬉しいです。 (2020年1月5日 23時) (レス) id: 84a58c20c8 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - 新作、おめでとうございます。今後の3人の展開がとても気になります。更新楽しみにしています。 (2020年1月5日 12時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまなつ | 作成日時:2020年1月1日 12時