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「わ、……っと」


ひらりと舞い落ちてきたカードは、ちょうどおれの手のひらに着地した。

キャバクラの名刺とかだったら地味に腹立つけど、って思いながらひっくり返してみると、ただの料理店のポイントカードだった。

なんだ。
それはそれでちょっとつまんない。


「やまだー朝メシ食べるー……なんかあった?」

「ん?いや、伊野尾ちゃんのスーツに消臭スプレーかけてただけ」

「え、なに。おれのスーツ臭いの?」

「おれのが湿気くさかったから。あんたのはついで」

「よかった〜。早くも加齢臭かと思った」


んなわけないでしょ。

寝癖頭をぺちんと叩いて、テーブルについた伊野尾ちゃんのカップにコーヒーを注ぐ。

味噌汁をすすって、「沁みるぅ〜」なんて唸ってる姿はおっさんぽくて笑いそうになっちゃった。

あ、そうだ。
さっきのカード、持ったまんまだった。

ちらりと手元で裏返してみると、洒落た字体で書かれた店名には見覚えがあった。

ああ、そういえば。


「ここの店、同期が美味いって言ってたけど、どうだった?」

「え?」


カップと一緒にさっきのカードを伊野尾ちゃんの前に置くと、伊野尾ちゃんはお茶碗片手にぴたりと固まった。


「え。じゃなくて、ここ、行ったんでしょ?」

「え、あ、ああ、うん。行った」

「会社の人と?いいな、デザイン系の会社ってなんかそういう店のセンスもよさそう」


けっこう雰囲気もいい店らしいから、本当はあんまりおれ以外の人と素敵なお店に行かないでほしいけど。

そんな子どもっぽい文句は飲み込んで、努めて大人な対応を見せる。


『いやもうマジで美味くってさあ!超ヤバイよ!山田も今度行こうよ!』


とかなんとか、そういうちょっと空気読めない伊野尾ちゃんの反応を想像してたんだけど、予想は外れた。

カードを目の前に掲げて、曖昧に笑ってみせるだけ。

大した返事もないまま、それからの伊野尾ちゃんはどこか心ここにあらずで、
朝飯を食べ終わるとそそくさと着替えに行ってしまった。

時計を見れば、もう出る時間だ。


「伊野尾ちゃん、おれもう出んね」


ネクタイを締める伊野尾ちゃんに声をかけて、彼の家を出た。

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komikku(プロフ) - とても面白かったです〜!続きが気になります☆お待ちしてます☆ (2020年6月5日 8時) (レス) id: 4ae5ae8e00 (このIDを非表示/違反報告)
あまなつ(プロフ) - みるみるみるきーさん» コメントありがとうございます!三者三様、100%の善人は出てこない重めのお話になるかと思いますが、ぜひ今後もお時間のあるときにお付き合いくださると嬉しいです。 (2020年1月5日 23時) (レス) id: 84a58c20c8 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - 新作、おめでとうございます。今後の3人の展開がとても気になります。更新楽しみにしています。 (2020年1月5日 12時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あまなつ | 作成日時:2020年1月1日 12時

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