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side.Y
***
「教育係の伊野尾です。まあ、適当に頑張っていこうね」
そう言って差し出された白くて細い右手。
見た目で好きになったわけじゃない!
って言いたいとこだけど、やっぱり、もうあの瞬間には先輩に恋をしていたのかもしれない。
好きな人の幸せが自分の幸せ。
そう自分に言い聞かせてきたけど、でも。
「──先輩、付け入る隙があるなら、おれにチャンスをちょうだい」
もう、後には引けない。
***
出汁の香りでいっぱいの店内は、和洋を織り交ぜた小洒落た雰囲気で、家族連れよりかはカップルとか、そういう感じの客層だ。
あっちこっちで聞こえてくる密やかな笑い声。
おれの目の前では、きのこみたいな髪型の先輩が、きのこたっぷりの炊き込みごはんを口いっぱいにもぐもぐしてる。
美味しい?って聞くと、納得いかなそうな顔しながらこくこくうなずくのが、なんかリスみたい。
「……んぐ、おまえさあ、いつのまにこんな洒落た店開拓してんの?昔は、いい店知ってます!っつってラーメン屋ばっか連れ回してたくせに」
「そりゃ先輩を誘うために必死なんだから、お店ぐらいチェックするよね」
「……」
黙っちゃった。
自分から聞いてきたくせに。
無言でまたもそもそごはんを頬に詰め込む先輩は、渋々付き合ってあげてるんですよって体だけど、けっきょく流されて来ちゃったんだから同罪じゃない?って。
しかも、なんか無防備に唇のはしっこにお米くっつけてるし。
もしかしてわざとだったりして。
そう思って手を伸ばしてみると、先輩は大げさなくらいびっくりしてのけぞった。
「さ、さわんな」
「だってお米ついてるから。取ってほしいのかなーって思って」
「そのくらい自分で取れるわ!」
今度は猫みたいに威嚇してるけど、「これも美味しいよ〜」ってきのこのソテーを差し出したら、またけろっとした顔で近づいてくるんだもんなあ。
なにもかも無自覚で、無意識で、思わせぶり。
ほんとたち悪くない?この人。
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komikku(プロフ) - とても面白かったです〜!続きが気になります☆お待ちしてます☆ (2020年6月5日 8時) (レス) id: 4ae5ae8e00 (このIDを非表示/違反報告)
あまなつ(プロフ) - みるみるみるきーさん» コメントありがとうございます!三者三様、100%の善人は出てこない重めのお話になるかと思いますが、ぜひ今後もお時間のあるときにお付き合いくださると嬉しいです。 (2020年1月5日 23時) (レス) id: 84a58c20c8 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - 新作、おめでとうございます。今後の3人の展開がとても気になります。更新楽しみにしています。 (2020年1月5日 12時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまなつ | 作成日時:2020年1月1日 12時