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溜まっていた洗濯物を二人で干し、面白くもないテレビの代わりに山田が持ってきたCDを流す。
山田はソファーで雑誌、おれはカーペットに寝転がってスマホゲーム。
時折思い出したようにくだらない会話を交わす。
なんてことないように触れ合い、絡んでは離れる指先の体温はよく馴染んで、おれを安心させた。
そんな穏やかな昼下がりを波打たせたのは、一件の電話だった。
ゲームをしながらちょっとうとうとしていたおれは、突然鳴り響いた着信音に跳ね起きた。
「おわぁっ!?なに!?火事か!?」
「うるさいな。あんたのスマホの着信音だよ。早く出な」
「え、ああ、なんだ……」
ったく、驚かせんなよ。
ビビらせやがって……と唇を尖らせながらスマホを確認したおれは、さらに驚く羽目になった。
「ゆっ……」
「ゆ?」
裕翔!!
「なに?湯?」
「な、なんでも……!ちょっ、あの、仕事の電話だわ!」
何の用だか知らねえけど、このタイミングで山田に裕翔との会話を聞かれるのは怖すぎる。
かといって、ここで電話に出ないのも不自然だ。
「どうしたの?」
寝癖のついたおれの髪を撫でながら、山田がきょとんと首をかしげる。
「いいよ、仕事の電話でしょ。気にしないから出たら?」
「え、あ、うん……」
おまえが気にしなくてもおれが気にするんだよ!
スマホを両手で握りしめたままのおれに、ますます山田が怪訝な顔になる。
「き、企業秘密の話かもしれないから、ちょっとベランダ出てくる!」
「へ?あ、伊野尾ちゃん……」
苦しい言い訳にびっくりしてる山田に背を向け、そそくさとベランダに走った。
慌てるあまり、ガラガラピシャン!と必要以上に強く閉めた窓の隙間に山田の声が潰れて消える。
ごめん山田!いやほんとごめん!
「っ、もしもし!なに!?」
『先輩!よかった、出てくれた〜!』
電話の向こうから聞こえてくる元気いっぱいな声にうなだれる。
「まじでなに?……いまあいつといるから手短にね」
聞こえはしないと思うけど、無意識に声がひそまる。
そんなおれの繊細な心も知らず、裕翔は「あっ、やっぱり恋人と会ってたんだ!」とのんきなもんだ。
『着信気付いたってことはおうちデート?』
「どうでもいいだろ。で、なに?」
『用事は特にないけど…』
しいて言えば、先輩の声が聞きたくて!
ばかみたいな台詞。
そういえばいつか、山田からも言われたような気がして、不覚にも懐かしかった。
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komikku(プロフ) - とても面白かったです〜!続きが気になります☆お待ちしてます☆ (2020年6月5日 8時) (レス) id: 4ae5ae8e00 (このIDを非表示/違反報告)
あまなつ(プロフ) - みるみるみるきーさん» コメントありがとうございます!三者三様、100%の善人は出てこない重めのお話になるかと思いますが、ぜひ今後もお時間のあるときにお付き合いくださると嬉しいです。 (2020年1月5日 23時) (レス) id: 84a58c20c8 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - 新作、おめでとうございます。今後の3人の展開がとても気になります。更新楽しみにしています。 (2020年1月5日 12時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あまなつ | 作成日時:2020年1月1日 12時