好きです、渡辺さん！ (ページ12)

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今日のランチは康二くんが誘ってくれて
一緒におしゃれなカフェに来ていた

目の前に置かれたスパゲティから美味しそうな
香りがして、一緒に頼んだコーヒーと相性が良さそう

『 … ん、おいしい！』

向井「お、ほんまに？
めちゃめちゃ美味しそうな顔してるやん！笑」

『会社の近くにこんなおしゃれなカフェがあるなんて知らなかったなあ、』

向井「そんな喜んでくれるなら連れてきて良かったわ～」

康二くんが選んでくれたコーヒーを飲んだ瞬間、懐かしくて苦い思い出が蘇った

… あ、この味、私がいちばん最初に飲んだのと似てる

あの日、渡辺さんと同じ豆のコーヒーを飲みたくて
やっぱりすっごい苦くて
飲み込むのも精一杯だったのを覚えてる

コーヒーなんてどれも同じ味だと思ってたけど
克服してから違いが分かって
名前も分からないこの味にたどり着くことができていなかった

向井「 … コーヒー、苦かった？」

『あ、ううん、大丈夫！
… 克服しようとした時に飲んだ味と似てるなぁって思って』

向井「克服？」

『 … ある人がね、コーヒー飲んでて
私も飲めるようになりたいな～って思って頑張ったの』

最初は素っ気なかった渡辺さんも
今ではメイクのことを褒めてくれるなんて……

… 最初よりは、渡辺さんとの距離、縮まってるかな？

さっきの言葉が脳内で再生されて
自然と笑顔が溢れてくる

向井「 … その人で、なんかいいことあったんやな」

『えっ、分かっちゃう？』

向井「わかるよ～、めっちゃ分かる！笑
幸せそうな顔してるで？」

『 … 良いことあったねえ、もうすっっごく良いこと』

だってあの渡辺さんが褒めてくれたんだよ？

もうこんなの私からしたら一大事件で…

…… え、渡辺さん！？

ふとカフェの周りを見渡すと
目の先には、腕時計を見ながら颯爽と歩いてる
渡辺さんの姿

え、うそ、こんな所で巡り会えるとは…

『ごめん康二くん、ちょっと待ってて！』

向井「えっ、Aちゃん！？」

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