第17話 ページ18
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「……………ごめん。」
『いや、私の方こそ無神経な発言だった。ごめんね。』
やっぱり面倒事に首突っ込むのは苦手だなあ。堀川にも迷惑かけちゃったし……いや、これはいつものことか。私は松野くんと隣同士でベンチに座りながら謝罪をし合う。でも今回ばかりは100私が悪かったな。敬愛する人を貶されたら誰でも苛立ってしまうなんてこと知っていたはずのに。反省だ。
私は未だ俯く松野くんの名前を呼んで顔をあげさせる。痛そうに腫れた顔にそっと手を添えると、松野くんは小さくいてっ、と声を出した。私はごめんねと謝ってから彼の頬から手を離し、彼にひとつの札を握らせた。
「これは…………札?」
『失礼なこと言っちゃったからね。それ、君が一番助けたい人に張りな。一度だけ危機を救ってくれる。』
松野くんに握らせたのは張られた当人の危機を察知し自動に完全防御結界が展開される御札。ここに来てからずっと研究し続け、この間ようやく完成した一品である。一度作り方を理解しちゃえば量産できちゃうから、これは未来あるこの子にあげちゃお。どうせ暫くは必要にならないだろうしね。
困惑するその子に、大事にしてね、と微笑む。突き返すなんて面倒臭いことやめてね。
私は最後にホントにごめんね、と言い残してタケミっちくんと雑談する堀川の元に駆け寄った。タケミっちくんてばいつの間に堀川と仲良くなったんだろう?結構警戒強い方だと思ってたんだけどな。
「あの……Aさんは、自分よりも強い相手と戦うときどうやって戦いますか?」
真剣な瞳が私を映す。突拍子もない質問に笑みが零れそうになるのを必死に抑える。ああ、きっとこれ堀川にも聞いたんだな。私は直感でそう思った。
『ゲームの中で、勇者は仲間を集めて経験値を溜めてから魔王に挑む。』
「え?」
『あれ?ゲームしたことない?』
「あっいや、あります。」
『現実も一緒。仲間を集めて、作戦立てて、十分に整えてから戦う。戦はなにも力だけが全てじゃない。君もそんなこと分かってるでしょ?』
相手が仲間と協力し合ってるなら尚更。一人で立ち向かうなんてあまりにも蛮勇すぎる。それでその人が死んじゃったら悲しむのはその人の友達や家族だからね。大切な人を守りたいなら先ずは自分を守るべし、なんちゃって。
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雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください (10月5日 17時) (レス) @page25 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくてぃー | 作成日時:2023年8月26日 22時