第15話 ページ16
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「へへ、俺に勝とうなんて1000年早いよ。」
そう言ってボロボロなオレらを見下す小さなソイツに興味が湧いた。事の始まりは数週間前。黒龍の下っ端共がコイツらに喧嘩を売ったことが全ての起因だった。小さな体のどこにそんな力があるのか。ライトグリーンの瞳を持ったそいつは自分よりも一回りも二回りもデカい奴をぶん回して笑っていた。だから、オレらはそいつらが不良ではないと疑いすらしなかったんだ。
コイツらが巻き込まれただけの一般人だと知ったのは関わりを持ってから数日経ってからのことだった。改めて陽の下で会ったとき、あまりにも小さいそいつらの見た目にココもオレも驚きを隠せなかった。流石に小さい子どもに手を出すのは違ぇ。それは、オレの意に反する。だから、ココにも一緒に頭を下げてもらって菓子折りも特別良いものを用意してもらった。
理不尽に手を挙げたんだ。ボコボコにされたのはオレらの方だが、許される所業だとは思ってない。そう、思っていたのに。
「そんなの要らないから寝床提供してくれない?俺たちが野宿してるって知ったら、多分主怒って世界呪っちゃうかも。」
「ああ、その通りだな。俺っちも別に気にしてないし、怪我させちまったのはこっちだしな。」
寧ろ怪我の心配をされちまった。ソイツらは薬研と蛍丸と名乗り、オレら黒龍のアジトに転がり込んだ。
薬研と蛍丸が話す会話の半分以上は"主"のことで、次第にオレらもその"主"に興味が出てきた。会ってみてぇな、と言葉を零せば2人は笑を零した。そんなにソイツのことが好きなのか。そう問いかけると、2人は当たり前だと言わんばかりに強く頷いた。それほど強い絆で結ばれているソイツらと"主"の関係が少し羨ましく思った。当人曰く、血も繋がってないのに。家族のような、その関係が羨ましくて、心がチクリと痛んだ。
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「やだもう怖いっ、」
とある日。薬研が"主"を連れてきた。明らか一般人ではないオレらの装いに、ソイツは足を竦ませた。ココがどう思ってんのかは知らねぇが、オレはただ仲良くなりたいだけなのに。そんなに怖がられたら傷付く。
『ねえ乾くーん』
「イヌピー、」
『ん?』
「イヌピーで、いい。」
歩み寄ってくれないならオレから歩み寄ればいい。な?簡単なことだろ?
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雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください (10月5日 17時) (レス) @page25 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくてぃー | 作成日時:2023年8月26日 22時