第12話 ページ13
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「兼さん、寂しさで枕濡らしてないかなぁ。」
『何それ天変地異?』
刀を手入れしながら小さく零されたそれに咄嗟にツッコミを入れる。あれからかなりの時間が経ち、今の生活にもすっかり馴染み始めていた。現世の食事も十分すぎるくらい美味しいけど、やっぱり私は歌仙やみっちゃんたちが作る和食が食べたい。短刀たちに囲まれながら花冠を作りたい。
百人弱と毎日を過ごしていた私たちにとって今のこの環境は余りにも寂しすぎるのだ。何度か他の刀剣男士を顕現しようと思ったけど"何か"がそれを邪魔してくる。無理にでも顕現しようとすれば、きっと、私の腕は吹き飛んでしまうだろう。
汚ねぇ花火だなァ〜?…な〜んつって!あっはっは!
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『…………。』
「…………。」
え、なにこれ(なにこれ)。前にも不良、後ろにも不良って。これこそ四面楚歌ってやつ?リアルじゃ始めてだわ。なんて言ってケラケラと笑う。そんな私のおちゃらけた態度が気に食わないのか、見覚えのある男は額に青筋を浮かべて威嚇し始めた。お〜怖い怖い。弱い犬ほどよく吠えるって言うもんね?
さて、まず、何故私達が不良に囲まれているのか。この経緯と理由について話そうと思う。まあ、結論だけ言うと気分転換に遊びに出かけたら捕まっただけなんだけどね。因みに理由何てものはない。強いて言うのならば、私たちへの復讐か牽制といったところだろうか。
私達を囲む不良の中で特段目立つ存在。私たちを嘲笑うかのように見下す彼は、「ばはっ」と愉快そうに笑った。右手の甲に罰、左には罪の刺青。何の意味を持ってその字を選んだのかは分からないけど全くもって雅じゃないね。某文系ゴリラなら雅を介さぬ罰だ!とか言ってもう既に斬りかかってた。
『……………で。何用かな?』
「だりぃ、別に知る必要なくねー?」
だってオマエら、もう死ぬじゃん。
笑顔で紡がれたその言葉に目を見開く。堀川は相変わらずにこーっと背筋が凍るような笑顔を崩さない。多勢に無勢のこの状況、さて、どうしようかと考えていたその時だった。
小さい"何か"が私たちの目の前を通り過ぎた。月明かりに照らされて輝く漆黒が風に吹かれてユラユラと揺れる。
──綺麗。無意識にその言葉が零れた。
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「御二方、怪我はねぇか?一気に畳み掛けるぞ。」
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雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください (10月5日 17時) (レス) @page25 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくてぃー | 作成日時:2023年8月26日 22時