第1話 ページ2
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『こりゃまた説教フルコースかな…………。』
「こんのすけとも本丸とも連絡がとれません。……襲撃、でしょうか?」
『………だとしても大丈夫でしょ。私の刀剣たちはそんなヤワじゃない。』
あまりの頭痛と耳鳴りに意識を手放したあの時からどのくらい時間が経ったのかは分からない。先ずは偵察だね〜なんて思ったが、まだ堀川の調子が悪そうなので近くの自販で水を買って堀川にそれを渡した。昔清光に言われ、いつ何時何があってもいいように常日頃から小銭入れとカードは持ち歩くようにしていた私。今日ほどそれに感謝したことはないだろう。とりあえずお金はちゃんと使えるから衣食住には困らないな、と安堵の息を零した。
さて、しかし、迷子という現状は何も解決していない。
気を失って目が覚めたら見知らぬ公園にいました──なんて、流石の私も笑えない。今頃向こうも私と堀川が居ないことに気付き、相当焦っていることだろう。先程まで楽しい空気に包まれていた本丸が混沌に包まれてしまう。堀川の言っていた通りこれが敵の襲撃だったらどうしようか。主のいない本丸なんて、電池の入っていない懐中電灯と同じようなもの。霊力の補充がなくなってしまえばあの本丸はただの建物に成ってしまう。早く帰らなければ、取り返しのつかないことに…………。
「あ、主さん、あれ!」
『ちょ、堀川?!急に動いたらダメでしょ?!』
頭の中がぐちゃぐちゃになっていたその時、堀川の綺麗な声が意識の端に入ってきた。私に全体重をかけていた堀川は勢いよく体を起こし、暗闇の方へ走っていった。一体何が起こっているのか。考える前に体が動いた私は全速力で堀川の後ろを追いかけた。
暗闇を走り抜ければ、女と、その女を庇うようにして体格のいい男共に立ちはだかる男の姿が街頭に照らされて見えた。男の方は既にボロボロで、衣服はその存在の意味を生していなかった。この2人はカップルだろうか。なんて考えていたのもつかの間で、体格のいい男どもが瀕死の男に殴りかかった──否、それは未遂に終わった。
「悪い、僕も結構邪道でね!」
『御二方、私の後ろへ!』
男の拳を受け止めてそのまま流れるように背負い投げをした堀川を横目に、襲われていた2人を背後に隠す。女は安心したのか腰を抜かして啜り泣いていた。
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雪見大福(プロフ) - これからも無理せず頑張ってください (10月5日 17時) (レス) @page25 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるくてぃー | 作成日時:2023年8月26日 22時