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終業のチャイムが鳴って荷物をまとめて教室を出る。
流星は部誌とってから向かうって言うから置いてきた。
下駄箱に向かう前にトイレに寄って身だしなみチェック。
前髪の巻きもとれてないしメイクも綺麗に残ってるし完璧！と意気込んでグラウンドを目指した。
「だーいちゃん！」
「ほんまに来たんかい。よぉ飽きひんな」
「飽きひんよ？だいちゃんはウチのパワーの源やもん」
グラウンドがよく見えるいつもの場所に行けばちょうどストレッチをしてるだいちゃんを発見。
ふぅん、って言ってたいした返事はないけど、はっきりと「帰れ」って言わへんところとか気恥しそうに後ろ髪をわしゃわしゃする仕草をみると本気で嫌がってないのがわかるからついウチもニコニコしちゃう。
「......今日もバイトなん？」
「バイト！今日な、試作品の味見してって頼まれてんねん！」
珍しくだいちゃんからの会話に嬉しくなって要らん情報までしゃべっちゃう。
楽しみやわ〜！ってひとりではしゃいでたらだいちゃんは呆れたように眉尻を少し下げて小さく笑う。
いやや、急にそんなかっこええ顔せんでよ。
普段そっけないくせに不意打ちでそんな表情、ずるい。
きっとだいちゃんからしたらウチなんて一個下の妹みたいなもんなんかもせん。
それでも、そんな優しげな顔見せられたら勘違いしてしまいそうになるやんか。
一瞬で速くなる心臓を落ち着かせようと無意識にブレザーの下衿部分に手が伸びていじいじしてまう。
「気ぃつけてな」
「えっ、」
「変なとこで鈍臭いねんから転けたりすんなよってことや」
じゃあ、って言ってタイミング良くかかった顧問の集合の声に動き始めるだいちゃん。
思わずでっかいため息をつきながらその場にしゃがみこんでしまう。
なにあれ。なんであんなにずるいわけ？
一瞬、真面目な顔をして言ってくるから拍子抜けした。
ウチってば、だいちゃんに振り回されてばっかや。
「はぁ〜......もっと好きなってまうやん、」
離れていく大好きな大きい背中を見つめながら呟いたウチの声は、青くて広い空に吸い取られて消えてしまった。
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作者名：いえやす | 作成日時：2023年4月12日 8時
