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可愛らしい見た目に反して案外強い力で手を握られて振りほどくことも出来ず大人しく彼の後ろを着いていってたら急に振り返ってきて苦手な食べ物あるか聞かれたから反射的に「き、きゅうりっ」 と答えると「子供か」と返ってくる。
いやおかしいやん、聞いてきたんそっちやし、ほんでいつの間にかなんかめちゃくちゃ砕けてない?
別にたかが一個下ってだけで敬語使えよ!なんて言わへんけど、なんや、この子のペース調子狂うなぁ。
ていうかさっきこの子、自分ん家行くって言ってたよな?
確かレンタルするにあたってのルールとしてキャストのプライベートには一切の踏み込み禁止、みたいなこと書いてた気がするねんけど。


「 あかんやん!トモ、くん、ストップストップ! 」


今朝打ち合わせした時に自己紹介されて以来なんやかんや彼の名前を口にするのは初めてでなんでかちょっと照れてもうたんやけどちゃんと足を止めてくれたから、ホッとする。
そんで、慌てて規約について改めて聞くと彼はきょとんとした顔で「あぁ、それなら」と話し始めたんやけどその先の言葉に俺は再び驚愕した。


「 今はもう"レンタル彼氏のトモくん"じゃないから大丈夫です 」
「 え、なにそれどゆこと 」
「 せやから、今のおれはただの大学生。ほんで重岡さんに一目惚れしたし今からめちゃくちゃアピールしてくから、よろしくな? 」


さっきまで綺麗や言われただけで顔を赤らめてウブな反応を見せてた可愛らしいトモくんはどこいったん?
爆弾発言と共にやけに男らしい彼に俺はずっと拍子抜け。
もうこんなん、軽い詐欺やん。てか一目惚れってなに?
改めて、「かみやま ともひろです」と名乗った彼は無邪気に笑って再び俺の手を引いて歩き出した。
一難去ってまた一難。また厄介事に巻き込まれたな、と頭を抱えそうになるも彼の笑顔をみただけで少しざわつく胸がすでに俺たちのこれからを予兆してるようにも思えた。



fin

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作者名:いえやす | 作成日時:2022年9月1日 1時

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