検索窓
今日:10 hit、昨日:67 hit、合計:61,217 hit

# ページ28






テレビを消してふたりで歯磨きをしたら神ちゃんは眠気に耐えられなかったのか早々に寝室へと姿を消していった。
これ使って、と初日に出してくれた来客用の布団を出してきて俺も寝る準備を始める。
ここにおるようになって数日。
昔からホテルで同室やったのもあって神ちゃんとの生活はすぐに慣れて、まるで家主かのように電気と火元の消し忘れが無いかを確認して寝室に戻る。
部屋の電気も消して神ちゃんの頭元にある間接照明も消そうと物音を立てないようにそっと近寄る。
あたたかみのあるオレンジ色にほんのりと照らされた赤ちゃんのような寝顔。
昔からこの寝顔をみるのが好きで、起きた時のぽやぽやした顔はもっと好き。
びっしりと隙間なく生えるまつ毛はきらきらと輝く瞳を隠してその間を通る真っ直ぐな鼻筋と丸っこい鼻先には普段の努力もあってか毛穴ひとつもない。
そのまますやすやとかわいらしい寝息を立てながら眠る神ちゃんの保湿リップで艶めく唇に目線が落ちていく。


「......起きんなよ、」


僅かに開いたそこに吸い込まれるようにして唇を寄せる。
心臓がアホみたいに大きく脈打つのがわかる。
ほんの一瞬重なり合った唇。
子供がするような、ただ触れただけの一方的なキスにじくじくと唇が熱くなっていく感覚。
マシュマロのような柔らかさとリップの独特なベタつきが唇に残って舌で舐めとると仄かに甘さを感じる。
んん、と声を漏らしながら寝返りをうつ神ちゃんをみて慌てて間接照明を消して距離をとるけど、たった今自分がしたことを思い返して頭が沸騰しそうになる。







「............好き、」


暗がりの中、規則正しく動く自分より少し小さい背中に向けてぽつりと囁く。
神ちゃんが寝てるうちに言うなんてずるいし小心者なんもわかってるけど。
今の俺にはこれが精一杯やねん。
あとどれだけこの生活が続くかわからんから。
いつか、面と向かってこの気持ちが言える時まで、今は夢のような時間に浸っていたい。
おやすみ、と心の中で呟いてまだ少し忙しない心臓を落ち着かせながら瞳を閉じる深夜。
まだこの気持ちは秘めたままで。







fin

ffe4e1→←#



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (129 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
347人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:いえやす | 作成日時:2022年9月1日 1時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。