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翌日。窓から射し込む朝日。晴れ。
そら梅雨と違うから晴れる確率の方が高いわけで、その分しげと会える確率がガクンと下がって朝からブルー。
しかも体育の授業もあるからさらにブルー。
昨日盛り上がった会話の中で得たしげの情報を思い出しながら駅に向かう。
サッカー部に所属してるらしくて晴れの日はトレーニングがてら自転車で学校まで行くねんて。
それを聞いて雨の日しか見かけへん意味がわかった。
しげが言ったであろう「またあした」を期待して今日を迎えたけど会えるタイミングなんてあるんかな。
電車の中で楽しそうに友達のことや部活のことを話していた彼はきっとクラスだけじゃなくて学年の人気者。
しげのクラスまでおれから行くなんて、できる気がせえへん。
学年が違うどころか校舎自体が全く違うからそんなところに2年のおれがいれば浮きまくり。
きっとしげにとっては何気ない別れの挨拶に過ぎひんかったのかもしれんけど、おれの感情ひとつを動かすには十分すぎる会話やった。
いつもの車両。いつもの扉。
電車に乗り込んでイヤホンを耳につけて最近お気に入りの音楽をかける。
『バニラかチョコ』って曲。
甘党男子のおれは単純やからタイトルに惹かれてなんとなく聴いてみたら、内容もかわいらしくて速攻プレイリストに追加。
ワードチョイスもおもしろくて、好きやねんなぁ。
電車に揺られながらイヤホンから流れてくる音楽に耳を傾けてぼーっと空を眺める。
今日、もしもしげのこと見かけたらなんて声かけよう。
自然に話しかけられるかな、なんて考えるのはもうずっとしげのことばかり。
燦然と輝く太陽が彼の笑った顔を思い出させる。
流星が乗ってきたら昨日のこと報告せな。
きっと眠そうな目が見開いて一瞬で目を覚ますんやろうなぁ。
容易に想像ができて笑ってしまいそうになるのを我慢していたら、突然、肩をトントンと叩かれた。
「神ちゃん、おはよ!」
「えっ、え、なんで......!?」
イヤホンを外しながら振り返るとそこには今の今まで頭に浮かべていた人物がニコニコ笑って立っていた。
おっきい声を出しそうになって、咄嗟に電車の中であることを思い出して手のひらで口元を覆う。
おれのびっくりしてる様子にしげはいたずらっ子みたいにお行儀よく並んだ歯を見せて楽しそうに笑ってる。
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作者名:いえやす | 作成日時:2022年9月1日 1時