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「あ、あの...!よかったら...、入りますか?」
「ええの?!むっちゃ助かるわぁ!」


パッチリとした綺麗な二重幅をした瞳を輝かせて、いつも遠目からみていた眩しいくらいの笑顔を向けられる。
思わず目を細めてしまいそうになるのを何とか耐えるけど、心臓はもう今にも壊れてしまいそうなくらいうるさく高鳴って。
予期せぬ展開と一気に縮まる彼との距離に、抱いていた恋心もどんどん加速していく。
昇降口を出ると代わりに彼が傘を持ってくれるというのでふたりでひとつの傘に入って駅まで歩き始める。
こんな奇跡みたいなことあってええの...?
さっきから激しく高鳴る鼓動が重岡さんに聞こえてしまわへんか心配で仕方ない。
チャンスやと思って自分から声をかけたはいいものの緊張しすぎて手と足が同時に出てしまいそうになる。


「俺、重岡!好きな食べもんはニラ」
「神山です。あ、えっと、甘いものが好きです...?」


突然の自己紹介タイム。
さっきあんだけでかでか叫ばれてたらあの場にいた人はほとんどあなたが重岡っていうことを知ったんちゃうかな。
しかもニラが好きってなに?料理名とかちゃうんや。
乗せられておれも甘党なこと暴露してもうたし。
重岡さんは「甘党なん似合うな!」ってケラケラ笑ってるけど、甘党に似合うとか似合わへんってあるんやって、ちょっと彼の独特な感性にクスッて笑ってしまった。
そのまま駅に着いても会話が途切れることはなくて同じ車両に乗ってちょうど2人分空いてるところに座ったら相合傘をした時よりも距離が近くて、肩や腕が触れ合う度に胸がきゅっと痛んだ。
心臓は今にも飛び出してきそうな勢いやけど、それでも彼の隣はやけに居心地がよかった。
各駅に停車する度、扉上の電子パネルに駅名が表示されるのがカウントダウンのように思えて寂しい。
隣で同じようにちらりと上部に視線を移したのがわかった。


「俺、降りるん次やねん。神ちゃんはまだやんな?」
「えっ?あ、うん、そやけど...」
「じゃ!ほんまに今日はありがとうな」


自然と呼ばれるようになった"神ちゃん"につい口元が緩みそうになる。
そしてほとんど強制されたタメ口と"しげ"呼び。
先輩やのに、って渋ってたら「そういう固いのはええから!」って言われてまるで5歳児のようにお願いと駄々をこねられた。


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作者名:いえやす | 作成日時:2022年9月1日 1時

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