４３．気持 ページ18
「大昔、だなそりゃ」
怒るでもなじるでもない。
静かな目と相変わらずのんびりした声は、
世間話でもしているかのようにのどかなままだ。
「嘘だろ…」
「え、お前って自分が思ってるより分かりやすいんだぜ？」
呆れ顔でトドメとばかりにそう言われて、
俺は離れたばかりの柵によろよろと戻って頭を抱えた。
「ちょ、待てってマジで…」
こいつが気付いてた？
A本人ですら気付いてなかったことを？
俺自身も今日やっと自覚したってのに？
だとしたら、じゃあ…
この十数年は何だったんだ。
(まるっきり道化じゃねぇか…！)
自分が思ったことに衝撃を受けて、
あまりの事態に呆然としてたら、
「ほい」
いつの間にかまた煙草をくわえた慶太が、
さっきの箱を俺に向かって差し出した。
「あ…おお、サンキュ」
とりあえず１本もらって並んで火をつける。
深く吸った煙を吐きだすとようやく落ち着いて、
その途端いたたまれなさにハッと我に返った。
「…ごめん」
多分この言葉が１番正しいと思った。
形がどうであれ俺がAに横恋慕してたことに変わりはなくて、
慶太は…名実共に彼女の連れ合いだ。
「悪ぃとは…思ってた、けどさ」
うつむきがちにボソボソと続けたら、
同じように隣で深く煙を吐いた慶太が小さく笑った。
「なんで謝んの」
「は？ いやだってお前、」
「なんも後ろめたいことしてねぇだろ？」
さらりとそう聞かれて思わず返事に詰まると、
「あれ、もしかしてした？」
「してねぇ！！」
食い気味に否定した俺に声をたてて笑うと、
慶太は目を細めて空を見上げた。
「俺、お前見ながらずっと思ってたことがあんだけど」
「…なんだよ」
そのままじっと空の一点を見つめて、
ぐっと真剣な顔になった慶太に思わず身構えた。
「付き合ってたって、結婚したってさぁ」
「…うん」
「別にAが俺のもんになったってわけじゃねぇし」
やせ我慢でも理想を語ってるのでもない。
慶太の横顔を見てればそれは分かるけど、
「人の気持ちなんてそんなもんじゃん。
他人が変えようったって無理な話だろ？」
「…」
「だからお前の気持ちだってさ。
俺がどうこう言う筋合いねぇなって」
ずっとそう思ってた。
空に向かってそう言い終えると、
慶太はホッと小さく息を吐いて真隣の俺を静かに覗き込んだ。
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薫子(プロフ) - ヤーコンさん» 初めまして！嬉しいコメントをありがとうございます。私も学生時代には友達と旅行なんてしませんでしたが、大人になってから仲間内数人と年１回【遠足】行くようになりましたよ♪なのでヤーコンさんもぜひ(^_-)-☆ 続編もありますので良ければお楽しみ下さいませ！ (2018年2月9日 16時) (
レス) id: bb4ba45953 (このIDを非表示/違反報告)
ヤーコン(プロフ) - 初めまして。凄く楽しかったです！（会話のテンポとか）友達と遠足、学生の頃行っておけば良かったと、このお話を読んで今後悔してます（笑）自分も妄想する事は有るのですが、お話にする事は出来ないので、凄いと思います。これからも頑張って下さい。 (2018年2月9日 13時) (レス) id: b43d1da901 (このIDを非表示/違反報告)
薫子(プロフ) - さやさん» 亀運転だったから完結後読破の方がストレスなかったと思う(笑) インド…大風呂敷すぎてシニマシタ。ぶきっちょ翔ちゃん、土産もらった方もフォローに困ったでしょうが…ま、みんな「大事にするね」って言ってくれたってことで。BGMいいね♪また某所でお待ちしてます☆ (2013年12月15日 0時) (レス) id: 6043de2546 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 完投お疲れ様です!今更の読破です！まさかまさかのｲﾝﾄﾞ話にﾋﾞｯｸﾘ！ｻｸｼｮｳの頭抱える姿や粘土との格闘ｼｰﾝはいつぞやの林檎の皮剥きとﾘﾝｸするwこのお話は『風の向こうへ・ワイハ』がｱﾀｼはハマったwまた某所にて製作秘話聞きたいわ(^з^)-☆ (2013年12月15日 0時) (レス) id: b8e2f59c3f (このIDを非表示/違反報告)
薫子(プロフ) - ゆきさん» 初めまして、コメありがとうございます(≧▽≦) オチ部分楽しんでいただけてよかったです(笑) とりあえず現在連載中の２本を終わらせてから次の作品…なので時間はかかると思いますが、楽しみに待っていて下さい♪他作品にもぜひいらして下さいね！お待ちしてます♪ (2013年12月14日 10時) (レス) id: 6043de2546 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：薫子
| 作成日時：2013年10月23日 19時
