１０３．思いがけない人 ページ4
実家に帰る時間など、
退院してから家のパソコンで調べればいい。
そう思い直して手にしかけたケータイを元の位置に置いた。
ふうっとため息をついてベッドに横になった時、
小さくノックの音がした。
「はい。どうぞ？」
事務局の人だろうか。
転院に関する手続きで何かあるのかもしれない。
そう思って見ていたら、
細く開いたドアの隙間から思いがけない顔がのぞいた。
「こんにちは。
入っていいかな？」
「え…二宮さん？！」
「うん。久しぶり」
慌ててどうぞと言うと、
二宮さんはニコッと笑ってするりと部屋に入ってきた。
壁際のパイプ椅子を取って腰掛ける。
「ごめんね急に。
びっくりしたよね」
「いえ…」
「ちょっと近くまで仕事で来たから、
そのついでっつったら失礼だけどさ。
…怪我の具合、どう？」
そう言ったものの、
二宮さんが私を見てちょっと困った顔になった。
(まぁくんに頼まれたのかな…)
全然連絡つかないしさぁ、
俺は来んなって言われてるから様子見てきてよ。
なんて、二宮さんにそう頼んでいる彼の姿が頭に浮かんで小さく聞いてみた。
「まぁくんに…」
「ん？」
「彼に言われて、来て下さったんですか？」
「ふふ、ハズレ」
ハズレ？
じゃあどういうことなんだろう。
びっくりしている私をよそに、
二宮さんが柔らかく言った。
「今日は俺が来たくて来たんだよ」
ダメだった？ といたずらっぽく笑っている。
あいまいに返事をしながらも、
(二宮さんが来てくれたってことは…)
もしかしてまぁくんに何かあったんだろうか。
この人達が彼のことを心配しないわけがない。
「つっても、正直言っちゃいますとね。
あの人…彼氏がね。結構参っちゃっててねぇ。
嵐さんも陰ながら心配してんだわ」
ほら、やっぱり。
『彼氏がね。結構参っちゃっててねぇ』
その箇所に胸が痛んだ。
一方的に連絡を拒んでしばらく経つから、
まぁくんが今どんな状態なのか全然知らないが、
側で見ていて参ってるのが分かるとは一体どういうことだろう。
(すごく痩せちゃったとか…？)
ご飯、ちゃんと食べているんでしょうか？
ちゃんと眠っているみたいですか？
…二宮さんにそう聞けばいいのに、
全ての原因が私にあると思うと怖くて切り出せない。
むしろ心配するぐらいならそもそもまぁくんを参らせるようなことしなければいいのに。
そんな自嘲気味な思いがぐるぐると胸のうちに渦巻いた。
ラッキーカラー
あずきいろ
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薫子(プロフ) - maiさん» コメントいただきありがとうございます！車内で涙腺崩壊との事、大変申し訳ございませんでした(^_^;) 長く辛い場面が多かったと思うのですが、この先のシーンや続きのお話は（概ね）幸せ仕様となっておりますので、また折々にコメントいただけたら嬉しいです♪ (2019年2月20日 21時) (
レス) id: aa5d845008 (このIDを非表示/違反報告)
mai(プロフ) - 初めてコメントします。主人公ちゃんが暗い部屋で手紙を胸に抱きキャラメルの瓶、、、で涙腺崩壊です。今帰宅ラッシュの車内なんですけど笑、その前の1通目の手紙を読み始めたシーンは乗り越えたんですけど、前を向いて努力しているシーンはダメでした（涙） (2019年2月20日 18時) (レス) id: a46eecf3b7 (このIDを非表示/違反報告)
薫子(プロフ) - 知代さん» そうなんです、まぁくんが知らない時間の経過を書いてる章なので、書いてて私も新鮮だったというか(笑) 字の上手下手とかでなく、手紙って書いた人の気持ちがダイレクトに伝わりますよね。私もそうやって手紙に力をもらうことが多くて、だからこの章は結構好きです＾＾ (2013年12月31日 19時) (レス) id: 6043de2546 (このIDを非表示/違反報告)
知代(プロフ) - この章は、本当に主人公ちゃんサイドが新鮮でした！ 手紙って、いいですよね。メールよりその人の気持ちが生きている気がして好きです。まーくんの手紙は人一倍あったかそうだ！！笑 (2013年12月31日 19時) (レス) id: fcde1493f2 (このIDを非表示/違反報告)
薫子(プロフ) - 弥生さん» 弥生さん＞2002年の結成当時から大宮ＳＫは自称『隙間産業アイドルユニット』なんですよ＾＾ 昨日は私も早々とソファーで寝落ちしてました(笑) 寝るなら布団でって誓ったのに…！ (2012年12月14日 22時) (レス) id: c4910a8134 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：薫子
| 作成日時：2012年7月13日 0時
