◆-150-◆冬の次 ページ31
「あなたが別に、面倒だとか…」
「そんな！」
「ね、そんなこと考えてそう決めたんじゃないってこと」
「え…」
「私もねぇ、ダテに年取ってるんじゃないのよ？」
「…」
「それぐらい分かるわよ、雅紀くん見てたら。
あなたの気持ちはいつも…いつでも、本物だったもの。
うちに初めて来た時から…」
母親はそこで言葉を切り、ふっと首をかしげた。
その仕草があまりに彼女を思い出させ、
相葉の胸がほんの少しチリチリと痛む。
「――ううん、違うわね」
遠い目をしたまま母親が続けて呟いた。
相葉の顔に目を戻し儚げに笑うと、
「最初から…きっと、分かっていたの。
私も、…主人もね」
母親は静かにそう言って仏壇に目を向けた。
愛する２人の遺影は今日も変わらず微笑みを浮かべている。
「あの子のところに初めて手紙が届いた時から…
あなたの気持ちが、本物だってことはね」
部屋に沈黙が落ちる。
仏壇から窓の外に目を移し、
しばらく黙っていた母親が呟いた。
「…今日は暖かいわね」
ここに来た時は肌寒いような気がしたが、
この地域に住んでいる人にとってはそうなのかもしれないと相葉は思った。
「早くて…長かったわね、１年」
「…はい」
「でも、最近は思うの私」
母親が窓から目を戻し、
相葉に向かって小さく微笑んだ。
「どんなに暗くて寒くて…
永遠に明けないような厳しい冬でもね？」
その頬はまだやつれ、
苦しみの痕が残っている。
しかし―――
「いつかは…日差しが降り注いで、
花に溢れる春が来るのよね」
しかしもう、
悲しみと苦しみに満ちただけではないようにも感じられた。
「冬のあとには…春が、来るのよね。必ず…」
自分に言い聞かせるように呟き、
母親はまっすぐ相葉の目を見て言った。
「だから大丈夫。
私も、きっと雅紀くんみたいに…
もう少しだけね、時間はかかると思うけど」
「すみません、なんか俺…
……なんか、分かった風なこと言って」
「なに言ってるの」
母親はゆっくりと首を振り、
美しく笑った。
「――それでこそ、自慢の息子よ」
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薫子(プロフ) - さやさん» いつもありがとう！ご想像通り解放感に満ち溢れておりまーす(笑) とにかく完走できてホッ！次はリーダー終わらせてあげなきゃ(-_-;) と言いつつ他の話も書いてるとこなのでまたどうぞよろしく♪ (2017年9月30日 15時) (
レス) id: bb4ba45953 (このIDを非表示/違反報告)
さや(プロフ) - 取り敢えず〜！お疲れ様でした！お話のお陰で以前の楽譜を引っ張り出して、ｱﾀｼも再チャレンジしてました！その時はできなかった弾き方を求めて…といいつつ、２回もお話を楽しませて頂きありがたき幸せw (2017年9月30日 8時) (レス) id: d0bf1f7a31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：薫子
| 作成日時：2017年9月9日 9時
