7つのキス ： WEST

隙ありキス ：紫 ページ9

「いらっしゃいませ〜」

　


駅裏の珈琲屋でバイトをはじめてもうすぐ1か月。

　

美味しい珈琲を淹れられるようになりたくて、入ったお店だけど、

　


「Aさん、ちょっと商店街の方へ行ってくるね。お留守番頼みましたよ」

　


「は〜い。いってらっしゃい」

　



この店のオーナーの平蔵さんが本当に優しくて、充実したバイト生活をしています。


平蔵さんの淹れる珈琲、本当に美味しい。

　


わたしもいつか、とは思うけど中々遠い話な気がする。


　

カランカラン

　



「ただいま〜」

　


「あ、崇裕さん！おかえりなさい」

　


「今日もお疲れ様やな！…んーと、おじいちゃんは？」

　


大学生のわたしよりいくつか年上で、すでに社会人の崇裕さんは、平蔵さんの孫でこの珈琲屋の2階を家にしている。

　

崇裕さんの淹れる珈琲も美味しいんだよね…。


　

「あ、平蔵さんは今商店街の方へ行ってます」


　
沸いたお湯をポットにいれる。

　

せっかくだし崇裕さんに珈琲を出そう。


　

「そっかぁ。ほな帰ってくるまでここに居座ろっと」

　


そんなわたしをみてか、カウンター席に座る崇裕さん。


そんな風にニコニコみられてると手元が震える。


　

「Aちゃんも上手になったなぁ」


　

「崇裕さんにはまだまだ敵いませんよ…？」

　


「とかいって〜」


　


崇裕さんとのこの時間が、何よりも好きなのかもしれない。


　


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