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戸をがっちり掴んだりつっかえ棒をしてる訳じゃないのに、無理やり入ってこようとしないあたり平和的だと思う。某六年生あたりは蹴破って入ってきそうだもの。



兵助｢……君が男が苦手っていうのは重々承知している。でもどうか、協力してくれないだろうか｣

『う"……』



その声に意思が揺らぐが迂闊に承諾は出来ない。男女ペアで町で流行りのものを買え、なんてデートじゃん。推しとデート。ご褒美ですか？いえ拷問です。絶対どこかしらに居るファンに殺されかねないよ……。



というかその前に一ついいですかね。そもそも私、彼と話すの今日が初めてなんですが？



なんで三郎や留三郎に引き続きこんな立て続けに上級生との絡みが増えてるのか。そういう運命だとしても積極的すぎない？こんなんじゃ、あの日立てた目標を果たせる訳がないんですが？



『だ、誰かの女装ではダメなんですか？鉢屋先輩とか……』

兵助｢五年生は各々同時に別の課題が出されているから手伝って貰えないんだ｣

『で、では先輩か後輩はどうでしょう！六年生ならせ……立花先輩とか、四年でも素材が良いのはいますし！』

兵助｢決して立花先輩たちを侮辱する訳では無いが、君は彼らと組んで課題をこなせるか？｣

『ゴメンナサイ』



私が間違ってました。彼らの能力が劣っている訳では無いし、むしろ仙蔵なんて完璧な女装が出来るし課題なんてなんのそのだろう。しかし女装した先輩とデート紛いなんてことになれば話は別だ。メンタル殺られる。

四年は四年で、特に女装が似合いそうな滝夜叉丸や三木ヱ門は文字通り"残念美人"だろうから私は一緒に歩きたくない。こればかりは兵助に同情せざるを得ない。



兵助｢……なんとか頼めないだろうか｣

『んぐぅ……』

乱太郎｢A先輩、どうか久々知先輩に協力していただけないでしょうか……？｣



話が進みそうにない気配を察知したのか、乱太郎がいつの間にか隣に来てこちらを見あげていた。身長差による必然的な上目遣い、可愛い後輩のものとも効果は尚更。かわいい。



『…………わ、かりました』

兵助｢本当か！｣



刹那、唯一の隔てであった戸が勢いよく開かれる。

某好物を前にしたかのように目が輝いている兵助に、両肩をガッと掴まれ顔が近づく。近い近い近い近い！！



兵助｢ありがとうA、お礼ならなんでもする！｣

『ア……』

兵助｢A？｣



この時乱太郎はアチャーと思ったそうな。

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