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廉side
"あ、あのっ!名前、教えて、下さい!"
俺は彼女の一言で、恋に落ちた。偶々助けた人の名前を知ろうとする人なんて早々おらへんと思ったから。
彼女は道端で倒れとった。見て見ぬふりなんて出来へんくて、気付いたら彼女の傍に駆け寄ってた。
彼女の病室前で座ってると、医者が来て、彼女は軽い貧血だと教えてくれた。
ほんまに無事で良かったと思う。もし、あの時俺が彼女を助けてへんかったら、彼女は今頃どうなってたんやろ…。考えるだけでモヤモヤする。
しかも、出会ってすぐ俺は彼女と手を繋いだ。いきなりやったし、初対面やった事もあるから当然驚いとったと思う。
でも、手を繋いだ瞬間に、彼女への好きが溢れ出したのは間違いなかった。
それは彼女が中学生になってからも変わらんかった。相変わらず俺は彼女が大好きで、朝、彼女に出会う度、色んな話で盛り上がった。
人見知り気味な俺でも、彼女と一緒に居ると楽しくて、自然で居られた。
彼女に思い切って告白した時、彼女が涙を流して頷いてくれたのは永遠に忘れる事はない。
あの日の彼女が世界で一番美しかった。
でも、幸せってすぐ壊れるモノなんやなって気付いたのは、彼女が受験生になってしばらく経った日だった。
俺のせいで彼女は変わった。彼女は両親に叱られ、最終的に俺と別れる事を選んだ。理由は分かってた。
これ以上、おかしくなりたくない。
受け入れたくなくても受け入れるしかなかった。彼女が大好きで、いつまでも傍に居たかった。叶わんかったけど。
別れてから会う機会も少なくなった。連絡を取る事もなかった。けど俺は片時も彼女の事を忘れる事はなかった。もう無理だって分かってたのに。
今日久々に会って、久々に彼女の手を繋いだ時、やっぱ変わらへんなって思った。相変わらずの小さい手。
家に呼んだ時、まさか来てくれるとは思わんくて、思わず飛び跳ねそうになった。
でも、彼女は変わってた。性格が悪くなってた。嫌いでは無いけど、好きでは無い。この時初めて、彼女に対して複雑な感情を抱くようになった。
A…
もし、またAが俺の事を好きになったとしても、俺はAが好きか分からへん
もしかしたら、嫌いになってるかも知れへん。
もしそうやとしたら、必ず俺の事嫌いになってええからな。
もう、嫌いかも知れへんけど。
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作者名:永瀬廉担 | 作成日時:2023年2月5日 4時