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『キャシー、ホテル着いたよ』
項垂れていたキャシーを強めに揺さぶって起こす。ホテル街の明るい灯に照らされた顔色を見ると、体調はだいぶよくなったようだ。
「ありがとうA……」
目を開けたキャシーはゆったりした口調と裏腹にテキパキと動き始めた。キャシーが動く度に、強めにふられた柑橘系の香水が鼻をつく。
髪をかきあげたキャシーは後部座席から荷物を取ってから、オレンジ色の爪で俺を指さした。
「A、これからもあなたのことずっと応援してるわ。近いうちにまた会いましょう。おやすみなさい」
『ありがとうキャシー、おやすみ』
そう言って車から降りて歩き始めたかと思いきや、Uターンして俺の座っている運転席側の窓をコンコンと叩いた。
ウィーンと音を立てて窓が完璧に開くのを待たずに口早にこういった。
「A、後悔しない方を選んでね。ファイティン」
じゃあねと手を振ってから歩き始めたキャシーの凛とした後ろ姿に胸を打たれた。今度は一度も振り返ることなく、ホテルの自動ドアをくぐった。
『スマホ、どこやったっけ』
ぼーっと更けていたが、一抹の不安に現実に戻される。
いつものように胸から尻へ手を滑らせても布が擦れるだけで、無機物の硬さが見当たらない。
慌てて鞄の中を覗くも見当たらなくて、容量の小さくてほとんど入ってない中身を引っ掻き回した。
あった。
切ってあった電源を入れるとブブブとバイブが鳴って、電源を切っていた間に送られてきたカトクが一斉に表示された。あ、電話もしてくれたみたい。
不在着信履歴を確認するとメンバーの名前ばかり表示されていた。俺が電話に出なかったことに憤慨する顔を思い浮かべると少し面白い。
誰に電話をかけようか。
……ホビにかけちゃう?
いやいや、なんか変なこと口走りそうだし変に緊張してきたからやめとこ。
思い直して、画面に指を滑らせ履歴を遡る。
やっぱいちばん最初に電話をくれたグクかな。珍しいよね、グクから電話くれるの。
通話のボタンを押して電話をかけると、ワンコールも鳴らない内に繋がった。珍しい。珍しすぎる。明日は雨かな。
「ねぇAヒョン今どこで何してるの!?」
俺は咄嗟にスマホを耳から離した。あまりに大きな音を聞くと耳がキーンてするっていうのは本当なんだね。
グクの声の後ろではユンギヒョンの「A!?」とかジンの「出た!?」とかメンバー達の声がする。久しぶりに聞く韓国語になんとなく違和感を感じた。
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日紫喜(プロフ) - ひらたさん» わぁぁ……!! 嬉しいなあ! ありがとうございます! これからも頑張ります!!コメントありがとうございました!! (2021年1月1日 22時) (レス) id: c77b20293f (このIDを非表示/違反報告)
ひらた(プロフ) - メンバーたちとの絡みが天才です‥‥‥‥!!思わずコメントしてしまいました!!男主くんのキャラクターが好きで好きで・・・!頑張ってください、応援してます!! (2021年1月1日 2時) (レス) id: 8bff64fcc3 (このIDを非表示/違反報告)
日紫喜(プロフ) - ayameさん» うわわわご指摘ありがとうございます!有難いです……早いうちに言っていただいたおかげでほんとに助かりました!ありがとうございます!頑張ります! (2020年12月27日 23時) (レス) id: c77b20293f (このIDを非表示/違反報告)
ayame(プロフ) - コメント失礼します。韓国で男性が年上の男性を呼ぶ時は「ヒョン」で、女性が年上の男性を呼ぶ時が「オッパ」です!この小説とても好きで続きが楽しみです!頑張ってください (2020年12月27日 20時) (レス) id: cf318a3932 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:日紫喜 | 作成日時:2020年12月27日 0時