たまたま黒の組織の秘密を知った女子大生の話【名探偵コナン】

75話 ページ32

追跡し始めてから、数時間。
隣に立つ彩葉先輩は、恋人のふりをするもののいつもとは雰囲気が違った。

私もちらほら、ターゲットを見るが怪しい動きは分からない。
けれど、先輩には分かるらしい。
さすが公安、さすが警察。



「…まずいな」


『…？』



私の後ろを見つめる彩葉先輩が、そう呟いた。
どうかしたのか、と後ろを振り向こうとするも顔を手で固定される。

割と強めの力で。



「尾行バレてるな…
Aちゃん、僕のことだけみてて」



私を見ている、風に見えて私の後ろのターゲットを見ている先輩。
がっしりと固定される顔に当てられた手にドギマギしながら、先輩を見つめた。

自分の心臓の音が、嫌に大きく聞こえる。

バレたらいけない、という緊張感からか、
それとも、



「ちゅー…！！蘭ちゃん、絶対ちゅーするであの二人！！」


「か、和葉ちゃん…駄目だよ、お邪魔しちゃ」



不意に先輩の後ろから聞こえた声。
きゃーきゃー、と顔を真っ赤にさせてニヤニヤと私を見ている。

冷静に、私の今の状況を考えて、



『ち、ちが』


ちゅ、と
唇の横に、柔らかさを感じた。

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