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ー木田 sideー
うっかりみなみんの制服を着て教卓の上で落語を楽しんでいたところをクラスメイトのAさんに見られてしまった。
Aさんは別に悪い人じゃないのを日頃の観察力と自己分析で大体分かっているが、流石に不安だから手首を掴んで逃げられない様にしていた。
すると誰かがこちらに走ってくる足音が聞こえてきて咄嗟に掃除用具入れに隠れた。
「…暴れないで、井上が入って来た」
*「…わ、わひゃっは(わかった)」
入って来たのは井上の野郎…最近みなみんに馴れ馴れしく話しかけているストーカー野郎だ。(違う)
まさかあいつもみなみんの制服を着て落語をよむつもりか…!?クソっ、あの野郎…!
井上の野郎が高橋さんの机を漁りだし、ストーカーのくせに二股かけてやがる!と怒りに狂ってつい身体に力が入ってしまい、僕の前から「う″、」と小さい呻き声が聞こえてきた。
「ごめ、力入れ過ぎた」
自分一人ここに居るわけではない事を思い出した時には遅くて、なにやら少しぐったりしていた。
そこでようやく今の状況を理解した。
狭い密室空間で男である僕が女であるAさんを後ろから抱き締める形で、しかも口を塞いでるのって結構ヤバいのでは…???
ふわり、と香るみなみんとはまた違う甘く柔らかい香り…男や人形とは違う温かく柔らかい身体…小刻みに震える姿はまるでか弱い兎…不覚にも心臓が跳ねる。
…いや!!!!!僕はみなみん一途だ!!!!!
やけにうるさい心臓のせいで井上の野郎が出て行った音など、もう耳にも頭にも入ってこなかった。
「…はッッッ、ごめ、出よう、」
勢いよく掃除用具入れから飛び出して吸い込んだ外の空気がやけに肺に染みて目眩すら巻き起こる。
どうして僕の心臓がやけに痛いのか、どうして君をもっと触れていたいと思うのか、どうしてお互い顔が赤いのか…今は分からないフリをしておこう。
僕は急いで女子制服を脱いだ。
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いろんなファン - すごく面白いし,もの凄く私好み(誰も聞いてねぇ)です!無理をしない程度にがんばってください!応援しています! (2021年6月3日 22時) (レス) id: 912b8fb989 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:芥川 たぅ@カツアゲの人 | 作成日時:2020年12月31日 1時