ヤバいですよ、藤井さん。 (ページ36)

今日:15 hit、昨日:8 hit、合計:118,618 hit

▽ 36 ページ36

「成程、これがそういう感情ならもしかしたらそうなのかも知れません」

藤井「…………え」

暫く会えてない…というとなんか違う気がするけど、最近滅多に遭遇する事が無かった。

智洋は家が隣な分ちょくちょく様子を見に来てくれたり、作り過ぎたからとおかずをおすそ分けしてくれたりしてる分、智洋という人物にはそこまで寂しく無かった。

だが、画面でしか映らない自分の知らない藤井さんに対してはどこか遠い人に感じてしまって心の奥底がムズムズしていた。

そのムズムズが寂しさというのならそれはそれで素直に認めなければ自分らしくない。

「多分、いつもこうやって対面してる藤井さんとテレビの藤井さんとのギャップが少し寂しかったのかもしれません」

顎に手を当てながら考えつつ物を言うと、驚きからか完全に涙が止まってる藤井さんが今度は顔を赤くしていた。

次第にへなへな、と肩を小さくしていって大きな手でその真っ赤な顔を覆ってしまった。

「…もしかして照れてます？」

藤井「照れるに決まってるやん！好きな人にこんな素直に言われたら誰かって照れるよ！待ってや、なんで今日こんなに素直なん…かわいすぎ…」

なんだか面白くなってきた私はうりうり、と藤井さんの華奢な脇腹をつついて笑う。

ぷるぷる震えていた可愛らしい藤井さんから一変、突然景色が変わって気付けば私はソファーに押し倒されていた。

────そこでようやく自分がヤバい人を相手に調子に乗っていた事を自覚する。

しっかりと掴まれた両手首、そこから伝わる熱、自分の足と足の間に入り込んだ自分のものじゃない足、身動きが取れない状況、目の前にある息を荒くした藤井さん…

本能が語る。これはYABAIZO！！！

「あ、あの…」

藤井「煽ったのはAちゃんやから」

「ちょ、待てこら…藤…ッ！」

端正な顔が近付いてくる。未経験の私でもこれは何か分かる。気は許してきてはいるが流石にそれは許せない。

かといって抵抗する術は持ち合わせてない。

取り敢えず必死に自分の顔を横に向ける。

藤井「こら、逃げんな…」

「ひぁっ、」

唇を回避したことにより、その唇は耳へと被さる状態に変化しただけで低く甘い声が鼓膜を舐める。

その刺激は勿論初体験で、意味のわからない体感した事の無い電流が自分の貧弱な腰をゾクゾク、と走り抜ける。

情けない声が漏れたのを自分も相手も聞き逃さなくて、顔は赤くなるわ嬉しそうにニヤついてくるわで…

.