ヤバいですよ、藤井さん。 (ページ18)

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濵田「じゃあおやすみ、A」

「ん、おやすみ」

あの後、桐山さんから両頬を掴まれてよしよしもちもち攻撃を喰らっているうちに涙が引っ込んだ。

中間さんと桐山さんは一緒に帰って行って濵ちゃんは私を送ってくれた。

濵ちゃんは優しく微笑んだ後、アパートの階段を静かに降りて行った。

それを見送ってからポストの中身を確認して鍵を開ける。

すると玄関には見慣れない黒い大きな靴が並んであった。

…来てるな。

呆れるが怖い事に慣れてきている自分がいる。

しかし警戒心はバリバリで深呼吸を一つ吐き出してから電気をつける。

その瞬間足音がリビングから聞こえてくる。

そして扉が開いてお馴染みのアイツが満面の笑みで向かって来た。

藤井「Aちゃん♡おかえりなさいッ」

「でしょうね…あなたでしょうね」

藤井「俺の事感じてくれてたんやね？んふ、めっちゃ嬉しいわぁ♡」

「はいはい、お留守番ありがとうございましたさようなら帰って下さい」

一息で言い終えると突然不審者さんが真顔になる。

それは見たことの無い表情で、あまりに心情が見て取れない(言ってしまうといつもだが)から靴を履いたまま固まってしまう。

怒らせてしまったのだろうか、少し怖くなって固唾を飲み込む。

「な、なんでしょう…？」

藤井「…Aちゃんさ、今日泣いてたやろ？」

「へ、」

藤井「Aちゃんが泣いてる様子“見てたら”心が苦しくなって…Aちゃんにはやっぱりいつでも笑ってほしいから…」

「ん？ん？ちょ、ちょ、ちょっと待って下さいなんでそれを知ってるんですか！？」

つらつらと今日の午前の事を喋られて吃驚する。

え、あの場には私と濵ちゃんと中間さんしか居なかったハズだしなんなら会社自体、専用パスポートが無いと入る事が出来ない。

いつも通り嫌な汗が背中をつたう。

言葉の続きを聞くか聞かないか…究極の選択を迫られている気がする。

藤井「ん～…それはまだ教えられへんねんけど…そんな事より！Aちゃん、辛いことあったん？俺に教えて？」

「…要は、心配してくれてるって事ですね」

藤井「うん」

「わ、ちょ…！」

いきなり強く抱き締められる。

ヘラヘラしてると思われたくなくて真顔になったのか、と思うと案外不器用な人なんだな…と思った。

いや、待てよ？器用ならこんな方法で攻めてこないか。

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