ヤバいですよ、藤井さん。 (ページ15)

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「今回も…でしたか…」

中間「うん…残念ながら…」

「ううぅぅうう…やっぱアカンかー…」

今回も賞を逃してしまっていつもながら落ち込んでしまう。

やっぱり刺さるようなモノが無かったのか…

「すみません…また恩返し出来ませんでした」

中間「何言ってんの、俺の為に書いてるんとちゃうんやから謝らんといて？

俺はいつまでもAが賞とるん待ってるから。焦らんとゆっくり考えて物語に集中し。書き方は面白いから」

「…はい。ちょっと頭冷やしてきます」

大事な事を忘れていた。

それを指摘されて今にも涙が溢れそうになってしまって急いで中間さんの元から離れる。

急いでエレベーターに乗り込んでそのまま下の階のボタンを押す。

モニターの階数が下がってドアが開く。

誰にも遭遇しない様に“雑誌West編集部”と書かれたドアの隣にある撮影スタジオに入る。

そして見慣れた撫で肩を見つけて駆け寄る。

「濵"ち"ゃ"ん"ッ！」

濵田「んぉ～A…って、うわ！えらい泣いてどないしたん！？

…あ、今日か！賞の発表！そうかそうか…ほら、そこのソファー座り！崇裕くん特製のあったかいココアいれたるわ」

「あ"り"がどぉ"…！」

濵ちゃんはここの会社の専属カメラマン。

確かな腕前だけでなく、爽やかな見た目と優しくて腰の低い対応、そしてド天然からによる面白いトークから大人気。

他の会社から引っ張りダコ状態だったのを知り合いだった中間さんと桐山さんが出し抜いたらしい。

出会いはその二人との飲み会に誘われた者同士で話が弾んだ事から仲良くなった。

それから練習に撮らせて、と言われてその練習に付き合ってその時に『Aが賞とったら絶対俺に写真撮らせてな』と約束した。

それから毎回賞の結果が出る度濵ちゃんのところに言って報告…と言うよりは慰めてもらっている。

悔し涙をおんおんと流していると目の前の机の上に真っ白な見慣れたマグカップが置かれた。

そこには湯気をたてた甘い香りのココアが静かに揺れていた。

濵田「よいしょ…今回の悔しいポイントは？」

「中間さんに指摘されたんやけど、私…良い作品を作るぞ！っていう気持ちよりも、

賞をとるとか…中間さんに恩返しするとか…そういう気持ち優先で書いてた。

そりゃあ作品に気持ち入る訳ないし、良い作品が完成する訳なかったんやって…」

濵田「そっか…でもそれに気付けたんなら次は絶対賞とれるんちゃう！？」

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