▽ 31 桃side ページ32
…淳太に出された命令、
今日Aちゃんを連れ去ってしげの記憶に刺激を与える事。
でも、Aちゃんを裏切る様な気がして、その為に来てると勘違いされる様な気がして
どうしても気が気でなかった。
するとAちゃんはすぐさま気付いてくれて、そんでもって気を使ってくれてるのがわかる。
でも何故かAちゃんは泣き出して、訳を聞いたら…なんだか俺まで泣きたくなってきて
気付けば俺は、俺よりも随分小さな身体を抱き締めていた。
自分の事ばっかり考えてたけど、Aちゃんからしたら俺はそんなに大切なポジションやったなんて思ってなくて
知った途端心が強く締め付けられた。
あーあ、そんな可愛い事言われたら余計に諦めたくなくなったし、命令も受け入れたくなってきた。
怒られるのは分かってる。
だから、今は…今だけはAちゃんのぬくもり感じさせてくれへんかなあ
▽
「え、キスされた？」
*「…うん、軽くちゅっと」
「……Aちゃんは、好きなん？」
*「う〜ん、イマイチ分からへんねん」
お昼休みに相談があると言われて屋上でお昼を食べる事になった。
そんで言われた事がいきなり『しげにキスされた』って言葉で頭が真っ白になった。
────なんで、なんでそんな事したん？
Aちゃんの表情は分からへんとか言いながらも赤くて所謂恋する乙女の表情で。
なぁ、それは明らかに無自覚であろうと好きって事やんか。
悔しくて、辛くて、苦しくて。
どろり、と真っ黒な感情が湧き出てきてAちゃんの気持ちは教えてあげない。
…最低なのは重々承知やもん。
*「でも、嫌な思いはせんかった」
「…じゃあ、これは？」
これまで我慢して来たのに、サラッと先に奪っていったしげに負けたくなくて唇を奪う。
しげが短くしたのなら、俺は長く味わってやる。それぐらい、許してや神様。
唇を離してAちゃんの顔を見てみれば顔を薔薇みたいに赤く染め上げてるのを見て取れた。
だから、期待してしまってん。
だから…だから次の言葉に泣きたくなってん。
*「なんでやろのんちゃん、ドキドキはするのに…こないだまでやないねん」
「…そっか、そうやん…な」
*「…！のんちゃん？なんで泣いてんの！？」
「え、」
言われて気付いたけど、頬には涙がポロポロ流れていた。
あぁ、もしもっと早くキスしとけば振り向いてくれてたんかなあ
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 53人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：芥川 たぅ@カツアゲの人 | 作成日時：2019年12月8日 22時
