願わない硝子の靴 ページ7
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｢見て、ママ。このデザイン、可愛くない？｣
幼い頃、差し出した紙に描かれた落書きを見て、あの人は優しげに笑った。慈愛に満ちた、その目を細めて。
｢とっても可愛い！才能があるんじゃない？｣
慣れた手つきで僕の頭を撫でる。
そんな母親が大好きだった。
3歳頃に発病したものが異端だということは、読み漁っていた本やバラエティー番組を見て理解していた。
だからこそ、拒絶を恐れて話せない。だけど、同じくらいの信頼を寄せていて、いつかは話そうと心に決めていた。
｢ねぇパパ。将来、デザイナーになりたい｣
そう打ち明けた時の表情は今でも忘れていない。忘れられない。一瞬、どうしたらいいのか分からないように虚を突かれた顔をして。慌てて繕った笑みを浮かべていた。
｢そっ…か。…うん、とてもいい夢だと思うぞ。頑張りなさい｣
そんな態度に違和感を持ったのは、既にすべてが手遅れになった後だった。
そんな両親に恵まれた
私自身は自分の事だというのもあり、あまりピンと来なかったが、そこまで言うのならそうだろうと思っていた。あんなに拒絶されることが不安だった病も小学校卒業と同時に打ち明けようと心の内に決めていた。
卒業証書を入れたリュックサックを背負い、右手は母親、左手は父親と繋いで舗装された道を歩く。
流石に小学六年生だ。手を繋ぐのは恥ずかしいと訴えたが、珍しくどうしてもとお願いされ、勢いに押されたまま断ることも出来ず照れを隠すよう少し俯いて歩いていた。
本格的に可笑しいと感じたのは玄関のドアを開いてからだった。
見たことの無い靴が綺麗に二足並んでいる。
私は自身の記憶力に勿論、絶対的な自信を持っていた。だからこそ意味が分からなかった。
一瞬で強盗、空き巣、取り立て等の物騒な言葉たちが過ぎった。
｢ママ、この黒いハイヒールって誰の？こんなの持ってたっけ｣
｢……ママのじゃないよ｣
｢だよね。…え、もしかして、パパ…？｣
｢そんなわけないだろう。…ほら、取り敢えず上がって手を洗ったりしてきなさい｣
｢…はぁい｣
素直に従わなければ面倒になることは察していた。
だから洗面所へ向かい、帰宅してからのルーティンをきちんとこなしてから両親の待っているであろうリビングへと向かった。
視界に入ったのは深刻そうに俯く父親、申し訳なさそうに微笑む母親、そして、唇を孤に描いた女だった。
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如月(プロフ) - かんざしさん» コメントありがとうございます！とんでもないほどの亀更新ですが、お付き合い頂ければ幸いです！ (2022年7月23日 9時) (
レス) id: 84c586e8ee (このIDを非表示/違反報告)
かんざし(プロフ) - いつも楽しく読んでいます。更新楽しみにしています。 (2022年4月10日 9時) (レス) @page22 id: d0a7163713 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - じんさん» コメントありがとうございます。いい作品と言ってもらえ、とても嬉しいです…！A3！も余裕が出てくれば書いてみたいと思っているので、その時は読んで頂ければ幸いです。これからもゆっくりですが、更新頑張りますのでお楽しみに…！ (2021年5月6日 22時) (レス) id: 84c586e8ee (このIDを非表示/違反報告)
じん(プロフ) - コメント失礼します。とてもいい作品だなと思いました。A3!も良いですよね〜(アイナナはゲームをしているのですが、なぜかA3!はダウンロードしても起動せず、ラノベで楽しんでます。)これからも楽しみにしています。(コメント中失礼な文があればすみません。) (2021年5月6日 22時) (レス) id: 8477ec0dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月 | 作成日時：2021年1月9日 16時
