EPISODE：35 ページ12
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険しい顔で横にしたスマホの液晶を見つめる棗さん。
イヤホンから小さく漏れているのは聞いたことの無いメロディだった。
ŹOOĻの新曲なのかと思ったが、既に誰かが歌ったものらしく、その上に棗さんが作るには系統が違い、穏やかすぎる曲調だ。人を惹き込むような魅力がある。
流石にイヤホン漏れからは誰が歌っているのかは判断出来ない。
腰かけた新品同様の黒いソファは物音一つ立てない。
テーブルに置かれていたペットボトルを手に取ると、一口分、喉に流し込んだ。
｢巳波、何見てんの？IDOLiSH7？｣
覗き込んだ亥清がその歌声の正体を明かす。
なるほど、言われてみればそんなような気がしなくもない。
キャップを閉めて再び元の位置へ置く。
｢『Sakura Message』か。この歌いいよな。胸にぐっと来てさ｣
｢私はそうは思いません｣
強い否定の言葉。
狗丸さんは当然戸惑い、何と返していいか分からないようだった。
棗さんはそんなことを気にせずに続ける。
｢恥知らずな人…あの歌の意味を知っているのに、仲間に歌わせて、平気な顔で笑っているなんて｣
液晶画面に哀れな視線を送り、立ち上がる。
一体、誰のことを言っているのだろう。
IDOLiSH7で棗さんと関わりが深い人。僕の知らない所で交友関係が育まれていなければ、ドラマで共演する二階堂さん、初対面から皮肉を言っていた相手である六弥さんの2人だ。
耳朶に食い込んだイヤリングを外し、痛みが残るのに思わず顔を顰めた。
イヤリングはその人の性格を表すようで見ていて飽きない。だから好きだが、この外した瞬間だけはどうも気に食わない。まだ感触が残っているようで気になってしまう。
耳朶のマッサージを軽く行いながら話に耳を傾ける。
御堂さんはその言葉の真意を知るべく、楽屋から出ていこうとした棗さんを引き止めたが、淡々とお花摘みにと返されただけだった。
歩みを止めずにドアノブに手を伸ばす。
それと殆ど同時だった。
｢やあ、聞こえたよ！ちょうど良かった。この花束を巳波にプレゼントしよう｣
正装である黒いスーツを着ているというのに、何だか爽やかには見えない。
了さんは綺麗だけれども小柄な花束を押し付けた。
｢…どうしたんです？この花束。デート中にレストランでグロテスクな話をして、突き返されてしまったんですか？｣
｢やけに具体的だね。経験談？｣
｢いえ、了さんのイメージです｣
2人の冗談かどうか分からない会話に、そっと目を逸らした。
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如月(プロフ) - かんざしさん» コメントありがとうございます！とんでもないほどの亀更新ですが、お付き合い頂ければ幸いです！ (2022年7月23日 9時) (
レス) id: 84c586e8ee (このIDを非表示/違反報告)
かんざし(プロフ) - いつも楽しく読んでいます。更新楽しみにしています。 (2022年4月10日 9時) (レス) @page22 id: d0a7163713 (このIDを非表示/違反報告)
如月(プロフ) - じんさん» コメントありがとうございます。いい作品と言ってもらえ、とても嬉しいです…！A3！も余裕が出てくれば書いてみたいと思っているので、その時は読んで頂ければ幸いです。これからもゆっくりですが、更新頑張りますのでお楽しみに…！ (2021年5月6日 22時) (レス) id: 84c586e8ee (このIDを非表示/違反報告)
じん(プロフ) - コメント失礼します。とてもいい作品だなと思いました。A3!も良いですよね〜(アイナナはゲームをしているのですが、なぜかA3!はダウンロードしても起動せず、ラノベで楽しんでます。)これからも楽しみにしています。(コメント中失礼な文があればすみません。) (2021年5月6日 22時) (レス) id: 8477ec0dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：如月 | 作成日時：2021年1月9日 16時
