127話 ページ29
「ワタシは『救世主』なんかじゃありません。逆にアナタたちに『救われた』身なのです」
「救われた？」
いつの間にか、ゴーグルさんが先生を連れて戻ってきていた。
「ええ。だけど、その話は診察が終わってからにしましょう？」
ワタシの意見に賛同し、みんなは廊下に出て行った。
診察結果は、回復して行っているものの、まだ休む必要があると。
やはり、そう簡単には治らないか。
仕方がないのだけど、少し悲しい。
沢山の人に迷惑をかけてしまうし、何かを手伝うこともできない。
一番悲しいことは、彼らと会う機会が減ってしまうこと。
遠くからでも、守り切れるだろうか。
診察が終われば、みんな入ってくる。
「どうだった？すぐ治る？」
ゴーグルさんが心配そうにきいてきた。
「まだ時間がかかるわ」
早く治せたらいいのだが。
悪者友達に回復できる人はいるのだが、病院に来てしまった以上、1日も経たずに治るのはおかしいと言われてしまうだろう。
人間がすごい治癒能力があると勘違いされかねない。
というか、人間がいる時点で世間的に大問題になっていそうだが。
「ワタシの存在がニュースになってたりしない？」
「オレらが口封じしておいたから、大丈夫だ」
ライダーの返答にありがとうと返す。
ワタシのことを考えて、行動してくれたんだ。
ごめんなさい、そしてありがとう。
「Aはどうするのだ？ワガハイらに姿がバレたが」
隊長は少し悲しい顔をして、ワタシに質問を投げた。
悲しい顔をしないで。
「逆に、アナタたちはどうして欲しいですか？」
それで、ここにインクリングとして残るか、元の世界に帰るか決めよう。
できるなら、まだ、帰りたくない。
もっと、友人と出かけたい。
もっと、友人とバトルしたい。
もっと、友人と過ごしたい。
でも、そんなわがまま、ワタシには言えないから。
言っちゃいけないから。
「オレは前と同じように過ごしたいな」
アロハが真剣な表情で言った。
「そこは言っちゃダメだろ〜。Aはいつも肝心な意見は言わないんだから〜」
「オレは素直に答えただけだけど〜？」
マスクとアロハが睨み合っている。
「そういうことだ。オレたちはいてもらっても構わない。オマエが居たいかどうかだ」
それなら、もう答えは決まっている。
「ここに居たいです。人間だとバレたとしても、アナタたちは黙っていてくれるのでしょう？」
「あったりメェだろ」
ライダーがニッと笑いながら言った。
自然と笑みが出てくる。
「ありがとう」
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作者名：RESUTE | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/f8abbae6051/
作成日時：2019年10月23日 19時
