124話 ページ26
「これが正しければ、オマエは『ニンゲン』と言うことになる。さぁ、どうする？大人しく薄情するか？それとも、その本を否定するか？」
研究者が作り上げた本の内容は合っている。
ここで嘘をついて仕舞えば、その研究者の努力は水の泡となってしまう。
ワタシはそんなことしたくない。
だから、破壊魔法を解く。
そうすれば、ワタシは元の人間の姿に戻る。
「ひどいよな〜。お友達に嘘つくなんて〜」
「それな〜」
敵は口々にワタシの悪口を言う。
「確かに、ワタシは最低です。嘘だってついたし、隠し事は沢山あります。しかし、ワタシはこう思うのです。『大切なもの』を傷付けるアナタたちに言われたくありません！」
ワタシは分かっていて『大切なもの』を奪ったりしない。
それがどれだけ悲しいことか、知っているから。
誰かから、『生きる理由』を奪いたくないから。
「『ニンゲン』っていう生き物にはナイフがきくんだよな？」
「ええ、そうよ」
ワタシは自分に不利になることに正直に答えた。
「なら、これを食らってもらおうじゃねぇか！」
一斉にナイフを持ってワタシに向かってくる。
ワタシは羽も広げない。
『破壊の力』だって出さない。
武器も持たない。
ただ、笑顔でその攻撃を受けた。
彼らがワタシの名前を呼ぶ声が聞こえる。
ワタシだって、受けたくて受けたわけじゃない。
これは何度も気絶させてしまったお詫び。
ワタシが傷つくことで済むなら、それでいい。
「A！死なないでよ！」
そう必死に泣き叫ぶゴーグル。
ワタシはその声を聞き、ゴーグルさんたちの縄を破壊する。
ワタシを何度もナイフを突き刺す彼らを、ゴーグルさんたちは自分の武器で捕らえた。
痛みなんて破壊して仕舞えば何ともない。
気絶だってしないようにできる。
『破壊の女神』だから。
血だらけでは少し目立ってしまうが。
服に染みつかれては、今のコントロール力では服ごと破壊してしまうため、無理だ。
泣きながら、ゴーグルさんはワタシに抱きついた。
「ごめんね、オレが捕まったばっかりに」
その言葉の後も、ずっとワタシに謝っていた。
「謝らなくて大丈夫です。ワタシがしたくてしたことですから。そんなことより、服が汚れてしまいますよ？」
「そんなことどうでもいい！生きててよかった」
さらにワタシをキツく抱きしめた。
ワタシは抱きしめ方を知らないから、変にはなってしまったが、何とか抱きしめ返した。
「そんなことより、早く手当てしねぇと！」
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作者名：RESUTE | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/f8abbae6051/
作成日時：2019年10月23日 19時
