星の集まり【短編集】

2※ ページ15

でも大活躍してない時を言うから、
「特に活躍してなかったけどね〜」
と嫌味らしく言うと、
「ワタシの中では一番アロハが輝いてたもん！ホントだよ？」
と少し頬を赤らめてかわいらしく言った。
そういうところは度胸あるんだから。
オレはそう言う彼女をいつも、抱きしめていた。
けど、そんな彼女はもういない。
日に日に薄らいでいく、彼女との思い出。
まだ、まだ忘れたくない。
頭を抱えて、思い出そうと何度も試みる。
けど、時間にはやはりかなわない。
最後の会話でした約束。
『あの桜並木を見に行くという約束』。
雨が上がった今日、まだ忘れたくないオレは、家を飛び出して自転車に乗り、約束の地へと向かう。
君の家に行く際に通る、通いなれた道。
「アロハ、待って！」
そうAの声がしたような気がして、後ろを振り返る。
「お地蔵さんにお参りしなきゃ」
カノジョは自転車を止めて、笠地蔵の前にしゃがむ。
そんな彼女を見てオレも自転車を止め、隣に立つ。
「どうするの？」
つまらなさそうに訊くと、それは気にせず、
「手を合わせて、こう」
そう言うと、目を閉じて頭を少し下げる。
オレはばかばかしいと思っていたから、ただお参りをする彼女を見ているだけだった。
それを思い出したオレは、自転車を止めて、彼女に教わったようにお参りする。
彼女と見るはずだった桜並木は、どうか、枯れていませんように。
お参りしたら、また自転車に乗って桜並木を目指す。
連日振り続いた雨はもうなく、雲一つない青空。
そんな中を必死にペダルをこいで、キミの好きな場所を目指す。
たどり着いて、自転車を飛び降りた。
その反動で自転車は大きな音を立てて転がったが、気にも留めなかった。
桜の花は、もう散ってしまっていた。
きっと、夕べの雨に花びらたちが耐え切れなかったんだろう。
彼女の好きなものが消えていく。
彼女の思い出が消えていく。
彼女が、消えていく。
そんな今の状況が、苦しくて、針が突き刺さったように痛くて、もがいても離れてくれなくて。
泣き叫んでも、いつかはこの桜のようにオレも枯れて、キミのように灰になってしまう。
でも、そうだとしても、オレは。
その先の言葉を思い浮かべたとき、また彼女との思い出を思い出した。
「ニンゲンは長くて百年も生きるんだって！ワタシたちインクリングと似てるね〜」
彼女は難しそうな本を見て、オレを見ずにそう言った。
「百年ね〜、じゃあ、オレたちもまだまだだよね〜！」

3※→←桜並木※死ネタあり【コロイカ】

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す