4話 はじめまして。 ページ4
ふわっとあの声が聞こえた。
かすかにだけど確かではないのだけど…。
走る度に私のひとつにくくった髪が揺れる。
制服のスカートがひらりと舞う。
そんなのお構い無しに、私は走った。
(もっと聴いてみたい…聴きたいっ。)
何故かわからないけど、気になってしまったのだから。
「あ、いた。」
やっぱり観客はいない。
けど、私はそのバンドの前に座った。
ゆったりと流れるこの曲。心にすって入ってきて気持ち良い。
目を瞑って聴いてみる。
その瞬間、演奏が止まる。
驚いた私は目をぱちくりして、
「え、なんでやめちゃったんですか？」
単純な疑問がぽんと口から出た。
「え。逆になんでここにいるんですか？」
ボーカルの彼のまさかの質問返し。
3人とも私の様に鳩に豆鉄砲くらったような顔。
私はその質問にむっとして言い返す。
なんで、そんな質問するの。
「こ、ここでやってるってことは、聴いてほしくてやってるんですよね…？」
「そうだけど。なんで俺達を？あんた首に掛けてるじゃないっすかグッズタオル。」
トントンとボーカルの彼の指が彼の首に当てられて気づいた。
そうか、さっきのバンドのタオルだから…。
「あ、えっとこれは。ライブで人に酔って、こっちに来たというか…その。」
なんて返せばいいのか、と言葉がゴニョゴニョしてしまう。
「あ〜なるほど。俺達は休憩の暇つぶし見たいな？どうりで可笑しいなって思ったよな〜。」
「それね。」
けらけらと笑う彼らに私の想い届いてないようで。
「で、でも、あなた達を見た時に気になったからっ！！ここ、ここに来たの。」
「え、なに逆ナン？」と前髪をわけたベースと人。
「まさかモテ期？」とドラムの人がこそこそと話し出す。
「こら！そこ！ナンパじゃないっ！！あなた達の歌が聴きたいなって思ったから来たのにっ！！」
はっとして口を噤む。自分の顔がサーと青くなっていく感覚。
(初対面の彼らに私は何を…。)
前の3人は顔をうつむけた。
(おこらせちゃったかな？)
しばらくの沈黙を破ったのは私。
「も、戻ります。」
こう言っても、なにも返事をしない3人。
(それほど、怒ってるってことか。そうだよね。あなた達の世界に私なんかが入り込んでも迷惑だろうし。私なんかが。)
「今日はごめんなさい。私はもう行くので。」
って、２回目の言葉にも反応なしですかっ！
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作者名：あられ☆彡。 | 作成日時：2017年8月6日 11時
