3話 運命のせい。 ページ3
始まったライブ。
「お前らっ。盛り上がるぞぉぉぉ!!」
ボーカルの彼が客席に呼びかけ、その呼びかけに対して会場が一体となって盛り上がっていた。
最前列の私はよく彼らが見える場所だ。
赤、青、黄、緑のライトが彼らを照らしていく。
爆発するくらいの音に慣れていない私は押し潰れそうになっていた。
ボーカルの圧倒的な歌唱力とともに、演奏もなかなかだった。
リズムをとって全員が揺れる。
熱く激しい酸素が足りなくなるような世界で楽しそう。うん。私も楽しい。
だけど、慣れてないせいか人に酔ってしまった。情けない話しだけど…。
左隣の凪ちゃんにこそっと耳打ちする。
「凪ちゃん。酔っちゃったから外でてるね。」
「え!大丈夫?私もついていこうか?」
「ううん。大丈夫。あんなに楽しみにしてたんだし最後まで楽しんできてよ。」
「あ、ありがとう!なんかあったら電話してよっ!!」
心配性の凪ちゃん。いっつもこういう所に助けられてしまうなぁ。
私はそれだけ言うと、人混みを掻き分け外へ出た。
一瞬だけ、一瞬だけボーカルの彼と目が合った気がした。
申し訳ない気持ちだった私はすぐに、目をそらした。
近くにあったベンチに腰掛けて、自動販売機で買ったカフェオレに口をつける。
喉の奥にこくんとカフェオレの甘みが広がっていく。
(少し落ち着いたかも。)
いつも間にか気持ち悪さも消え、すっかり良くなっていた。
腕の時計を見ると、ここに来てから2時間経っていた。
気になったのはこっちじゃなくて、あの小さな3人組のバンド。
いるかなぁ…という淡い期待を持って、私は歩き出した。
後ろから聞こえるわぁぁぁという歓声を後にして。
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作者名:あられ☆彡。 | 作成日時:2017年8月6日 11時