我儘 ページ33
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トーストにバターを塗って
三角が二つできるように切って、
スクランブルエッグを作り、
簡単なサラダと一緒に
焼いたウインナーも、
ワンプレートに盛る。
コーヒーを二つのマグに入れてる時、
リビングのドアが静かに開いた。
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｢…おはよ｣
私を見つけて、優しく微笑む櫻井は
まだ完全に開いてない目を擦りながら
ぴょん、と跳ねてる寝癖を
もう片方の手で抑えてる。
｢おはよ、ご飯食べるでしょ？｣
｢…当たり前｣
｢…｣
昨日と同じ会話。
なのに、空気が違う。
全然、違う。
｢…なぁ、A｣
ダイニングテーブルに座った櫻井が
私の方を見ずに話し始める。
｢ん？｣
｢…ごめん｣
｢…｣
『最後に抱いて、ごめん』
そういう、ことだろう。
｢俺、サイテーだな｣
｢…櫻井、｣
｢あーあ、絶対に俺のこと好きにさせてやるって
俺しか見えなくしてやるって
そう、思ってたんだけどなぁ｣
そう言って、窓の外をボーッと見つめる櫻井に
朝食のワンプレートとコーヒーを差し出す。
｢さんきゅ｣
コーヒーを啜る櫻井を見つめながら
私は、なんて答えようか悩んでた。
｢幸せだった？｣
突っ立ったままの私に櫻井の瞳が向いた。
｢…当たり前でしょ｣
｢そ？なら、良かったよ｣
｢ごめん…ほんとに、ごめんね｣
｢…謝んないでよ、泣きたくなるじゃん｣
なんて、冗談らしく言う櫻井の瞳には
薄ら涙が浮かんで見えた。
気のせい、なのかもしれないけれど。
.
付き合って、たったの数週間。
まだまだ夏は終わりそうにない。
なのに、もう
私達の関係が終わるなんて。
私だって、きっと櫻井に夢中になる
なんて思ってたのに。
櫻井は私が好き。
私も、櫻井が好き。
だけどお互いの“好き”は違っていた。
何度キスされても、何度抱かれても
何度名前を呼ばれても、何度好きだと言われても
櫻井の気持ちと、私の気持ちが
同じになることはなかった。
最後の別れの夜に抱いて抱かれるなんて、
そんなカップル、
私達以外に居るのかな、なんて
そんなこと考えたって仕方ない。
これが、私達なりの踏ん切りの付け方。
そう、思う。
それで、少しでも櫻井が前を向けるなら。
私のことを、『アイツ最低だよ』って
相葉くんや周りの友達に吐き出せるなら
それで構わないと思った。
それだけ私は、最低で卑怯で情けなくて
愚かで軽い女だと。
私は私が嫌いになった。
櫻井も、嫌いになれって願った。
それすらも我儘だ。
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作者名：湊 | 作成日時：2018年7月18日 0時
