KOOL (ページ32)

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三度目の夜ページ32

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その日。

私は櫻井と体を重ねた。

付き合ってから三度目だった。

一度目はホテルで、二度目は櫻井の家。

そして三度目は、昨日私の家で。

何度も、何度も

櫻井は私の名前を呼んで

呼ぶ度、好きだと囁いて

囁く度、涙を零して。

こんなの間違ってる。

こんなのお互い傷付くだけだ。

こんなの、こんなの…って

私だって何度もやめようと、

ストップかけようとした。

だけど、出来なかった。

櫻井の、切なそうな悲しそうな

愛おしいものを見つめるような瞳で

『最後に…お願い』

って言われたら、

そんなの、そんなの…

･･･ーーー断れない。

分かってた。

私の気持ちも、

私の気持ちに気づいてる櫻井も。

分かってて、知ってて

そのうえで、私と櫻井は

最初に交わした“お試し”をしてた。

そうだ。

私と櫻井は、ただの“お試し”。

ちゃんとした付き合いじゃない。

そう、言い聞かせれば

私の心は軽くなった。

…気がした。

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隣でスヤスヤ寝息を立てる櫻井。

くっきりの二重の線は

目を瞑っていても、よく見ると

しっかりと弧を描いてる。

長い睫毛はくるっと上を向いてる。

綺麗に通った鼻筋。

ぷっくりしてて、リップでも塗ってるの？

ってくらい赤い唇。

触れたくなった。

櫻井の頬に手を伸ばしかけて、

やめた。

私、ほんとにサイテーだ。

こんなにも想ってくれる人を

傷つけて傷つけて傷つけて…

最後まで、サイテーだ。

まだ起きる様子のない櫻井をベッドに残して、

シーツからそーっと抜け出して

下着だけの体に

部屋着のスウェット生地のワンピースを纏う。

｢…はぁ、｣

小さく溜息を零して、

朝食を作りにキッチンへ向かった。

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