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シャワーから出た櫻井と一緒に
バラエティ番組を見ながら缶ビールを
カツン、とぶつけて乾杯する。
｢なぁ、A｣
ゴクっと一口飲んで、櫻井が私を見る。
｢ん？｣
｢お前、俺のこと好き？｣
ドキッとした。
一瞬、ほんの一瞬だけ
どう応えようか悩む自分がいた。
｢好き｣
｢うそ｣
｢嘘じゃないよ、なに？面倒臭い｣
｢俺めんどくせーの、知ってんでしょ？｣
｢なによ｣
櫻井の瞳は真っ直ぐで、
からかっているようには見えなくて。
その瞳が私の罪悪感や
自分に対しての嫌悪感、不信感を
ふつふつと湧かせる。
｢そういう櫻井はどうなの？お試しの私｣
嫌味ったらしく言う私は
ほんとに可愛くない女だ。
｢俺はすんげえ好き｣
｢そ、…私もだけど｣
｢ふぅん…ま、また忘れた頃に聞くよ｣
｢なにそれ(笑)｣
笑ってみせたのに、櫻井は真剣で
やっぱり私の気持ちに気づいてるみたいで。
居心地の良かった櫻井の隣が、
今、この瞬間は
なんとも居心地の悪い空間になってて。
その原因は私で。
あぁ、馬鹿な女だなぁって
自分が嫌になる。
｢もう寝よっか｣
半分くらい残った缶ビールの中身を
流しに捨てて、ベッドへ向かう。
｢俺これ飲んだら寝るから先寝ていいよ｣
そう言う櫻井をリビングに残して、
ベッドへ潜り込むと自然と溢れた涙。
私は一体、どうしたいのか分からない。
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暫くして、背中に感じた温もり。
私のお腹に後ろから回ってきた腕は、
重くて白くて逞しくて綺麗で。
私の存在を確かめるように
ギュッと私を抱き締めた。
｢A｣
耳元で囁かれたら、
私の顔は自分で分かるくらいに熱くなって。
｢ごめん、こんなに好きで｣
謝る櫻井の声は震えてる。
｢Aを縛り付けたくないんだよ、｣
スン、と鼻をすするのを聞いて
くるっと櫻井の方に体を向けた、瞬間、
唇に触れた櫻井の熱が
私の涙を誘う。
｢ッ、さくら、い｣
｢でも俺ッ、Aのことすげえ好きなの｣
｢…うん、｣
｢好きな奴の幸せ願って身引けるほど俺強くねえの｣
｢…、｣
｢だけど、頑張るからせめて最後くらい一緒に居てよ｣
そっか。
櫻井は今日、別れるつもりで
私の家に来たんだ。
櫻井は気づいてたんだ。
分かってたんだ。
私の、ユラユラした情けない感情に
気づいていて、好きだと言ったんだ。
櫻井の優しい瞳に映る私を見て
涙は、溢れて止まらなかった。
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作者名：湊 | 作成日時：2018年7月18日 0時
