じゃん負け ページ4
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櫻井がまだ吸ってるのを見て
｢櫻井、私先にデスク戻るね｣
二宮くんに会釈して喫煙所を出た。
タバコの匂いがついた服に
香り付きボディミストをふりながら階段を上がる。
あぁ、それにしても今日は暑い。
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デスクに戻ってデータ入力してたら
隣のデスクに櫻井が戻ってきた。
｢なんで先に戻んだよ｣
｢二宮くん居たんだからいいじゃん｣
｢まぁ別にいいけど｣
｢なにそれ、じゃあ言わないでよ｣
目線を合わせず、
お互いパソコンを見ながら言葉を交わす。
｢A｣
ガラガラと椅子のキャスターを転がしながら
私のデスクまで来て、ジーッと見てくる櫻井を
私はチラリとも見ずに返事をする。
｢なに｣
｢今日ひま？｣
｢は？｣
｢お前の反応ってさ、マジで可愛くねえ｣
｢櫻井に可愛いとか思われたくない｣
｢可愛くねえな、マジで(笑)｣
｢で、なんで｣
｢暇なら飯付き合えよ｣
｢やだ｣
櫻井が私を誘う時は、大体飲みに行く時。
｢なんで｣
｢明日、朝から予定あんの｣
｢潰れねえ程度に飲めばいいだろ｣
｢はぁ…奢り？｣
｢じゃん負け｣
｢仕方ないなぁ｣
誘いに乗る私も私だ。
今日はまだ月の初めの方だから
仕事量もそんなに多くはない。
残業の心配もないし、
まぁ明日の予定って言っても
断る口実なだけで何も無いし、
七夕に独り身は寂しいし。
櫻井で我慢してやろう。
きっと、女の子はこんなイケメンと
七夕に二人で飲みに行くなんて羨ましい
って思うんだろうけど
私にとって櫻井はそういうんじゃない。
櫻井も、それを分かってるからか
私に色目を使うようなことしないし、
前に櫻井が言ってた
『Aは他の女と違って俺に興味が無いからイイ』と。
“イイ”の意味は何なのか聞かなかったけど、
多分、だから友達で居られるってことなんだと思う。
私だってそう。変に気を遣わずに居られるから
櫻井とは居心地がいい。友達として。
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作者名：湊 | 作成日時：2018年7月18日 0時
