渦めく ページ30
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定時。
仕事も溜まってない私は、
パソコンの電源をオフにして
帰り支度をしながら
隣のデスクでまだ仕事中の櫻井に
先に帰ると伝えた。
ちょっとだけ、ムスッとした櫻井は
｢ちゃんといい子で待ってろよ｣
なんて言っちゃって。
ドキッとしたのを隠して、｢ばーか｣って
可愛くないセリフを残して会社をあとにした。
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帰り道。
せっかく櫻井が来るならご飯でも作って
言われた通り“いい子”で待ってよう。
近くのスーパーに寄ったら、
今日は特売日だったみたいで
色んなものが安くなってて
ついつい長居しすぎたのか、
櫻井からの『今から向かう』という
メッセージで急いでレジを通して帰路についた。
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簡単なものを作って、テーブルに並べて。
二人分を作るなんて久しぶりで
ちょっと作りすぎたかな、なんて思ってたら
インターフォンが鳴って、
櫻井の到着を知らせた。
｢お、いい匂いがする｣
スゥ、と深呼吸する櫻井が
私に微笑む。
｢適当なものしか作ってないけど、食べるでしょ？｣
｢当たり前｣
ちゅ、と櫻井の可愛い唇が私の額に触れた。
｢いい子で待ってれたじゃん｣
なんて、ちょっと厭らしく笑う櫻井。
甘い。甘すぎる。
なんだこれ。
恥ずかしくなりながら、櫻井の背中を追いかけて
私もリビングに向かった。
｢うまそ！｣
揚げ物は面倒で、粉物も面倒で、
煮物なら待つだけだからいいかと思って作った
大根と豚バラの煮込み。
簡単すぎるほうれん草のおひたし。
野菜が安くてせっかく買ったから
使おうと思って作ったピリ辛のチョレギサラダ。
海鮮も食べたいなぁっていう
私好みのタコとサーモン、きゅうりとトマトの
ゴロゴロカルパッチョ。
イタリアンなのか、和なのか、韓なのか。
なんともバラバラな
私の食べたいものだけをチョイスした献立でも
櫻井は本当に美味しそうに食べてくれた。
洗い物は、櫻井がしてくれて。
その間に私はシャワーを済ませて、
交代で櫻井がシャワーに行く。
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私の中にはまだ、
あの時の
二宮くんの影が
頭の中に残っていて。
素直に真っ直ぐ櫻井を
好きだと見られない自分がいて。
気づいているクセに、
見ないふりをしている自分にも、
櫻井にも、なんとも言えない感情が
私の中をうずめいていた。
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作者名：湊 | 作成日時：2018年7月18日 0時
