瞳 ページ27
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咄嗟に出ようとスマホに手を伸ばしたら
その手を掴まれて、代わりに櫻井が
応答のボタンをタップした。
『もしもし、Aちゃん？』
スピーカーにされたままで
私と櫻井の間に置かれた私のスマホ。
櫻井を見たら、クイッと顎で
“話せ”って合図。
｢…もしもし｣
『よかった、出てくれないかと思った』
｢どうしたの？｣
『あー、いや、さっきはごめん』
二宮くんのその一言は、
私と二宮くんが何かあったことを、
さっきまで一緒に居たことを裏付ける発言で。
櫻井の眉がピクっと動いた。
｢…うん、｣
『今一人？…ってか、これ最初に聞かなきゃだね』
｢櫻井…いる、｣
『え？』
｢ニノ？俺だけど｣
私が言葉を発する前に、
櫻井が口を開いた。
『え、あ、翔さん…』
明らかに狼狽える二宮くん。
｢ニノ、俺さぁ監視してっつったのに
お前が手ぇだしてどうすんの｣
『…』
電話越しの二宮くんは黙っちゃって、
向こう側の街の雑踏が聞こえる。
｢ねぇ、ニノ｣
『ごめん、翔さん。俺、クズだな』
｢…今どこ？｣
二人の会話は、至って冷静で。
櫻井のさっきまでの血相が嘘みたい。
｢来いよ、Aん家｣
『…分かった、あと20分で着くと思う』
｢ん、じゃ｣
一方的に切った通話。
スマホ画面はホームに戻って、
私の意識も櫻井へと戻る。
｢ねぇ、A｣
｢…｣
｢俺もお前が好きだよ｣
｢…うん｣
｢だから怒ってんの、それは分かるだろ？｣
｢分かってる、ごめんなさい｣
｢でもね、｣
暫くの沈黙。
｢友達とキスしたような女とは付き合えないわ｣
櫻井の瞳は、寂しそうで哀しそうで
だけど怒りも見えて、愛おしさもあって。
私は心がついていかなかった。
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作者名：湊 | 作成日時：2018年7月18日 0時
