喫煙所 ページ3
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私たちの部署のある8階の一つ下。
7階に喫煙所はあって、喫煙所のくせにやけに洒落てる。
櫻井がガラス張りの扉を開けたら櫻井越しに人影が見えた。
．
｢はよー｣
｢あ、翔さん。おはよ｣
そこに居たのは、営業部の二宮くん。
全く話したことは無いんだけど、
櫻井と二宮くんは仲が良くて、
何度か顔を合わせた事がある程度の顔見知り。
｢おはよう、二宮くん｣
一応挨拶はしとく。
｢あ、羽原さん。おはよ｣
櫻井の時と同じ返事をする二宮くん。
彼は、なんだか苦手。
何を考えてるのか分からないのに、
こっちの心は透視されてるような感じがする。
それに、私のタイプは濃い顔の男。
二宮くんは真逆で、子犬みたいに可愛い顔をしてる。
女の私より、っていうかそこらの女の子よりも
すっべすべの綺麗な肌を持ってる。
あ、でも背は少し低くて猫背だ。
．
櫻井がポケットからタバコを取り出して
ジリ、っと火をつけた。
私が唯一、櫻井の表情でドキッとする瞬間。
タバコに火をつける時に櫻井は眉間に皺を寄せて
煙そうな顔をする。それが好き。
櫻井だから、とかじゃなくて
男の人のそういう表情が好き。
櫻井を横目に見ながら、私もタバコに火をつけた。
｢翔さん、最近疲れてない？｣
二宮くんが会話を続ける。
｢あー、最近忙しくてさ｣
｢そうなの？ずっとパソコンと睨めっこだしね｣
｢そそ、ブルーライトにやられっぱなしよ｣
｢俺は営業スマイル振りまきすぎて
顔が筋肉痛になりそうだわ(笑)｣
｢俺営業ぜってえ無理｣
｢だろうね(笑)｣
｢他人に愛想振り撒くとか疲れねえ？｣
｢まぁ俺は苦痛じゃないけど｣
｢俺はパソコンと睨めっこが性に合ってるわ｣
二人の会話はテンポが良くて、
聞いてて気持ちがよかった。
二宮くんが斜め上に煙を吐き出すと、
私の方に視線を向けて、目が合った。
｢羽原さんって、下の名前なんだっけ？｣
｢Aだよ｣
私が答える前に、横から櫻井が言う。
｢あー、そうだった。Aちゃんね｣
｢うん、そうだけど…どうして？｣
私が聞くと、鼈甲色の瞳が私を捉える。
｢んー？なんでもない｣
｢興味ねえなら聞くなよ(笑)｣
櫻井がまた横から割って入る。
｢別にいいじゃん、気になったんだもん｣
ほら。
こういうところ。
苦手だ。
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作者名：湊 | 作成日時：2018年7月18日 0時
